海外留学をしようと思い立った際、まず最初に立ちはだかるのが費用の壁。
以前こちらでもご紹介しましたが日本から見たオーストリアの物価は、一言で言えば「モノによっては高い」という何とも言い難い水準の国です。
ただ、昨今の世界情勢により過去10年~5年以上前に比べればその平均値は大きく上昇してきており、ふと思い立って留学するには中々難しくなっているのが現状です。
今回は2022年~2023年前後の相場感から、実際のオーストリア留学費用がどれくらいなのかをご紹介していきます。
また、為替相場におけるユーロ円の動きは大体数年かけて110円~150円前後を行き来している感じなので、1ユーロ約120円~130円程度を想定しています。
※もちろん例外もあり、過去リーマンショック前には1ユーロ170円にとどく時期もありました…。
家賃
留学生活費の中で最も気にかけるべき部分。
ここの費用で生活費総額の大枠が決まります。
現状特にウィーン・ザルツブルクでの不動産価格の上昇が激しく、40㎡のこじんまりとしたものでも500ユーロは見積もる必要があります。
グラーツ辺りならほんの少し安くなってきて、40㎡なら450ユーロも「探せば」あります。
もちろんルームシェアやStudentenheim(学生寮)ならもう少し良心的な値段の物件もありますが、やはり考えることはみんな同じで、人気の綺麗で便利なところは空き待ち状態が普通。
ただ、運が良ければチャンスはあるのでしっかりチェックしておくのも大事です。
特にオーストリアへの留学目的の大部分を占めるであろう音大生はお部屋探しに非常に苦労します。
私自身かつてはピアノ科の人間だったので、同様に楽器演奏可な物件に関しては全く簡単ではなかった記憶があります。
楽器演奏が必須条件になる場合、条件に合う物件を探す他、定期で借りられる練習部屋の確保の線でも調べてみた方が良いです。
例によって楽器の持ち運びができないピアノ科はやはりつらい所ですが、ここをおろそかにしてしまうとのちの留学ライフが辛くなるどころか遠のいてしまうのでがんばるしかないです。
光熱費
昨今爆上がりで噂のガス・電気代。
住むお部屋のサイズや暖房器具、生活スタイルによってこれも大きく異なるのですが、一人暮らしだと大体月50~80ユーロが中央値です。
ちなみにこの費用は前月の使用分から計算されるわけではなく、直近の平均から算出されるのが特徴。
引っ越してきて初年度めちゃ安い!と思って使いまくっていたら翌年スゴイことになったなんてのはしばしばある話です。
また、水道代は原則大家・貸主が管理するものなので考慮していません。(家賃に含まれていることもありますが、もし別請求されていたらちょっと聞いてみた方が良いかも)
交通費
ウィーンを例に挙げると市内の学生であれば1セメスター(半期5か月)が75ユーロ※、夏休みがひと月29,50ユーロ、年間計209ユーロでチケット購入が出来、それさえあれば市内のバス・トラム・地下鉄・電車は乗り放題です。
学生の交通費については他の都市もそう大きく相場は変わりません。
※2023年から安くなりました。
保険料
日本でいう国民保険的な立ち位置の加入必須な「強制保険」です。
補償の意味では日本で入る保険会社のものでも賄える場合がありますが、これは滞在許可証の申請・取得にも必要となります。
オーストリアでは州によって加入する先が異なり、ウィーンなら「WGKK」、ザルツブルクなら「SGKK」と言った具合です。
現在は学生なら大体月70ユーロ弱で加入することが出来ます。昔は23ユーロ程度しかかからなかったもので、物価上昇の影響を大きく受けたもののひとつ。
学費
学費の免除・減額制度も含め学校によってピンキリなのでなんとも言えませんが、ひと月400ユーロ以下が相場かと思われます。(要チェック)
夏季休暇はセメスターには入らないので、年間で4,000~5,000ユーロ程を考えておくと良いかと。
食費
自炊食材費
大一番、腕の見せ所。
オーストリアは肉・野菜などの基本的な食材はけっこう安いです。
ジャガイモや玉ねぎなら1kgで1,50ユーロ前後、合いびき肉なら100gで0,70ユーロ、豚肩なら100gで1ユーロ程の相場観です。
もちろん牛肉は日本と同じく青天井ですが、ハムやチーズ、乳製品、調味料、米等も日本より安く買えることが多いので自炊が得意なら大きな倹約効果が期待できます。
ちなみにお米は日本米ではないのがたまにキズ。
ただし、冷凍食品やサラダパック、惣菜などの既製品となると話は別。
ちょっとしたサンドイッチでも2ユーロ3ユーロはざらで、何かしら人の手が加わる類のものはあまり安くないどころか日本より高いです。
また、冷凍食品やレトルト類も日本に比べ種類が少ないため(味も…)、セール品を見逃さない優れた観察眼が必要となります。
特にパンは日本のそれより安い上に美味しいので、米の民族我々日本人であっても必然的にパンが食卓に並ぶことが多くなります。
個人差はありますがひと月200~300ユーロくらいが多いかと思われます。
外食費
日本のそれと比べるとけっこう高いです。
付き合いとか絡むと全く外食しないわけにもいかないので、ぶっちゃけ一番悩むところだと思います。
コース料理でなくてもメインディッシュ・定食相当なら大体単品11~13ユーロが多く、オーストリア人からすれば1,100円~1,300円くらいの感覚でも日本人からすれば1,500~1,800円くらいの感覚。
飲み物とかサイドメニュー頼んだらすぐ20ユーロいっちゃいます。
日本で2,600円もあれば大分イイもの食べられますよね…。 😕
カフェ等でもケーキ+飲み物で10ユーロ行くか行かないかくらいの相場なので、欲望の赴くまま外食しているとえらいことになります。チップもありますし。
また、個人的に一番不便と感じるのは、日本でのラーメン・チャーハン・カレー等に相当する500円~1,000円くらいのちょっとした料理が非常に少ないこと。
ピザを除けばケバブ・シュニッツェルセンメル・ホットドッグ等、本当に小腹を満たすボリューム感の料理しかないので、さすがに育ち盛り男子の胃袋を満たすものではないんですよね。
これも個人差はありますが、週1~2回を目標に節度を守れればひと月150~250ユーロくらいに収まるはずです。
娯楽・趣味費
映画館や美術館に行ったり、服や靴を買いたい時もあるでしょう。
あれもこれもと手を出さなければひと月150ユーロくらいが妥当かと思います。
総額
おおよその中央値をとっていくと、大体1,200~1,300ユーロ前後が毎月の生活費になります。
これは日本円で15万円~17万円相当で、日本の地方の社会人が貰える手取りに近い額です。
親が工面してくれる方は感謝を忘れずに。
これは上述の様に割と慎ましく、健全に暮らした際の費用なので、人によってはもっとかかることもありますし、1,000ユーロ以下に抑えている凄腕の倹約家の方ももちろんいます。
ただ、留学ともなれば一般的には半年~4、5年くらいはかかりますので、ある程度留学資金の準備は事前に必要なことが分かると思います。
私は回し者でも何でもないのですが、給付型の海外留学奨学金を狙ってみるのもアリですね。
バイトで生活費の足しにできる?
日本での学生生活であればアルバイトをしてやりくりする、というのは常套手段ですが、残念ながらオーストリアでの留学ではそれができません。
なぜならオーストリアで働くには就労ビザなるものが必要で、それをとるのがめっぽう大変だからです。
これはバイト先が決まった状態で雇う側も協力して申請するものなのですが、それでも取得率は非常に悪く、せっかく面接に受かったのにビザが取れなくて無かったことに…なんてのは日常茶飯事です。
ですので生活費の足しを工面する場合、それ以外の手段を考える必要があります。
ここではあまり詳しくは取り上げませんが、例えばクラウドソーシングなどでの作業代行等が一例として挙げられます。
また、税法上のチェックは必要ですが演奏の謝礼等もありますね。
知識があればFXやNFT、アフィリエイト等も考えられますが、学生の本分と離れてしまうのでおすすめはできません…。
いずれにしても今の時代、時給以外にも収入を得る手段はありますので学業に支障が出ない範囲で色々なことにチャレンジするのは大事なこと。
せっかくのオーストリア留学をよりよいものにできる手助けになれば幸いです。