あなたは全部回れる?初めてでも分かるオーストリアの世界遺産
オーストリアには2022年現在全部で12種類の文化・自然遺産がユネスコ世界遺産に登録されています。
名所が数多く存在するオーストリア旅行・観光において、初めての場合限られた時間・予算の中で最大限楽しむにはどう回るかのプランが非常に重要です。
ここではそれぞれの概要からアクセス方法・観光での見どころまで初めての方にも分かりやすくご紹介していきます。
ページ後半にてそれぞれの世界遺産の場所を地図でもご紹介していますので、位置関係を確認したい場合にもご参考にお使いください。
ウィーン歴史地区
Historisches Zentrum von Wien
オーストリア観光ならここに行かなきゃ始まらない、ヨーロッパ有数の世界都市・オーストリアの首都ウィーンの中でも最もエッセンスの詰まったエリアです。
正直ここさえ押さえておけばオーストリア観光の半分は平らげたといっても過言ではないでしょう。
見どころ
歴史的建造物、美術館、博物館、宮殿、教会の他、首都の中心部でもあるため市庁舎、大学、議会議事堂等が所せましと立ち並びます。
また、「音楽の都」としてモーツァルトやベートーヴェン、シューベルト等の誰もが知る音楽家たちが活躍したウィーンでは、世界的にも絶大な人気を誇るウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の本拠地ウィーン楽友協会、ウィーン国立歌劇場、ウィーン・コンツェルトハウス等にも足を運ぶことが出来ます。
歴史地区としてのポイントからは外れますが、ウィーナーコーヒーをはじめとするカフェ文化の中心でもあり、名菓ザッハートルテの本家ザッハーホテルやデメル、カフェ・ツェントラル、カフェ・ラントマン等のカフェにも足を運ばざるを得ません。
なお、ウィーンの歴史地区は市内の中心部を指しており、1区にあるシュテファン寺院を中心とした環状線(リング通り)のエリアになります。
エリアと言っても実際の距離はそれほど大きいものではなく、徒歩でも30分程度で端から端まで到達できる規模感です。
周辺にある観光施設・名所など
ここで全てをご紹介するのは難しいですが、特に有名な観光ポイントを挙げるとすれば以下の通り。
- シュテファン大聖堂(Stephansdom)
- カールス教会(Karlskirche)
- ベルヴェデーレ宮殿(Schloss Belvedere)
- ホーフブルク宮殿(Hofburg)
- ウィーン市庁舎(Wiener Rathaus)
- オーストリア議会議事堂(Parlamentsgebäude)
- ウィーン国立歌劇場(Wiener Staatsoper)
- ウィーン楽友協会(Musikverein Wien)
- ウィーン・コンツェルトハウス(Wiener Konzerthaus)
- ブルク劇場(Burgtheater)
- ウィーン大学(Universität Wien)
- ウィーン国立音楽大学(Universität für Musik und darstellende Kunst Wien)
- ウィーン・コンセルヴァトリウム音楽大学(Musik und Kunst Privatuniversität der Stadt Wien)
- ウィーン自然史博物館(Naturhistorisches Museum Wien)
- 美術史美術館(Kunsthistorisches Museum)
- アルベルティーナ(Albertina)
- ミュージアム・クウォーター(Museums Quartier)
- 市立公園(Stadtpark)
- カールスプラッツ駅(Karlsplatz)
- アンカー社のからくり時計(Ankeruhr)
- ホテル・ザッハー(Hotel Sacher)
- カフェ・ラントマン(Café Landtmann)
- カフェ・ゲルシュトナー(Gerstner)
- オーバーラー(Oberlaa)
- デメル(Demel)
- カフェ・ツェントラル(Central)
- カフェ・モーツァルト(Mozart)
- カフェ・シュペール(Sperl)
ウィーンでの住所
シュテファン寺院(中心部)
Stephansplatz 3, A-1010 Wien
ザルツブルク市街の歴史地区
Historisches Zentrum der Stadt Salzburg
ザルツブルクはその名の通り紀元前から岩塩(ドイツ語でSalzは塩、Burgは城砦)で栄えてきたドイツ国境近くの小さな町。
ウィーンに負けず劣らず歴史・宗教・文化の面で世界に名を知られるオーストリア自慢の都市です。
街を6:4程度の比率で縦に割るかの様にザルツァッハ川(Salzach)が流れており、
- 左岸の旧市街(Linke Altstadt)
- 右岸の旧市街(Rechte Altstadt)
- ノンタール(Innere Nonntal)
- ミュルン(Innere Mülln)
- メンヒスベルク(Mönchsberg)
- フェストゥングスベルク(Festungsberg)
- カプツィーナベルク(Kapuzinerberg)
のエリアが歴史地区として指定されています。
見どころ
上述の通り、はるか昔からその価値を認められてきた岩塩の産地であるこの街は特に政治と宗教の点で多くの歴史があり、地区内にも大聖堂や教会・修道院や城・宮殿等が数多く立ち並んでいます。
街自体もそれほど大きくはなく装飾的な鉄細工の看板が並んでいる通りが多いことや、かの有名な映画「サウンド・オブ・ミュージック」のロケ地として多数使われていることから首都ウィーンとは違い可愛らしい街並みと評されることも少なくありません。
いわゆる路地裏・小道にも隠れた名店が潜んでいたりするので、散策の楽しさという点ではウィーンよりも好きという方も多い様です。
ザルツブルクには独自の郷土料理もいくつかあり、
- ザルツブルクの山々を意味するザルツブルガーノッケルン(Salzburger Nockerln)
- カレー風味のホットドッグボスナ(Bosna)
- モーツァルトの絵柄でパッケージされたチョコレートボールのモーツァルトクーゲル(Mozartkugel)
等が非常に人気です。
また、クラシック作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが生まれた街としてクラシック音楽も非常に栄えており、コンサートや音楽祭も数多く、音楽・舞台芸術の総合芸術国立大学モーツァルテウムはウィーン国立音楽大学に匹敵するほどの名門校として知られています。
周辺にある観光施設・名所など
こちらも全てをご紹介するのは難しいですが、特に有名な観光ポイントを挙げるとすれば以下の通り。
- ホーエンザルツブルク城(Festung Hohensalzburg)
- ミラベル宮殿(Schloss Mirabell)
- ヘルブルン宮殿(Schloss Hellbrunn)
- レジデンツ広場(Residenzplatz)
- グロッケンシュピール(Glockenspiel)
- モーツァルト広場(Mozartplatz)
- ザルツブルク大聖堂(Dom zu Salzburg)
- 聖ペーター僧院教会(St. Petersstiftskirche)
- ノンベルク修道院(Stift Nonnberg)
- 三位一体教会(Dreifaltigkeitskirche)
- 祝祭大劇場(Großes Festspielhaus)
- モーツァルト記念館(Mozarts Geburtshaus)
- モーツァルテウム(Mozarteum)
- 人形劇場(Marionettentheater)
- ゲトライデ通り(Getreidegasse)
- ゴルト通り(Goldgasse)
ウィーンからの移動方法(一例)
ウィーン「Meidling」駅→電車→ザルツブルク(片道約2時間半)
シェーンブルン宮殿と庭園群
Schloss Schönbrunn
年間約670万人が訪れるオーストリア・ウィーンでも屈指の名所。
ハプスブルク家が建てた、まるでディズニー映画に出てきそうなほど美しいバロック様式の宮殿に加え、敷地内には広大なフランス式の庭園、迷路、世界最古の動物園等、一粒で様々な景観を楽しむことが出来ます。
見どころ
宮殿の後ろには世界最大規模の「グロリエッテ」が丘の上に建ち、そこから見える庭園の全景とウィーンの景色と交互に味わうカフェでのひと時は是非一度行っておきたい場所です。
ちなみにオーストリアではチョコレートボールの名菓モーツァルトクーゲル(Mozartkugel)がお土産の定番の一つですが、ここで買えるSissi(エリザベート皇后の愛称)版モーツァルトクーゲルや食器類等も一味違うお土産としておすすめです。
ウィーンでの住所
Schönbrunner Schloßstraße 47, A-1130 Wien
グラーツの市街-歴史地区とエッゲンベルク城
Stadt Graz – Historisches Zentrum und Schloss Eggenberg
グラーツは観光地としての知名度はウィーン・ザルツブルクに後れを取りがちですが、その規模はオーストリア第2の都市として知られており、学生数約6万人を誇る大学都市としての学術面や工業化による発展が目覚ましい歴史を持つ都市です。
また、エッゲンベルク城をはじめとする美術館や武器庫博物館も観光名所の核を担いつつ、発展した農業コミュニティによるトリュフや塩漬け肉・ワイン・パンプキンシードオイル等の美食の街としてもその名を馳せています。
見どころ
華やかなウィーンや可愛らしさを持つザルツブルクとは異なり街の雰囲気自体は比較的落ち着いているものの、町全域をカバーする交通網、豊富なモニュメント、現代美術や音楽のフェスティバルも相まって散策のしやすさは他都市に全く引けを取りません。
しかしその真価は歴史背景を知ることで発揮されます。
街並み全体が世界遺産に登録されているのは、ゴシック様式・ルネサンス様式・バロック様式の保存状態の良い歴代建築物が今でも実際に使われている建物として生きているため。
言い換えれば、この街を散策するという事は当時の時代の街並みを見聞きしながら練り歩くという事でもあり、まるでゲームでしかお目にかかれないような中世時代の城下町を自分自身の目線で体験できるという事です。
周辺にある観光施設・名所など
全てをご紹介するのは難しいですが、特に有名な観光ポイントを挙げるとすれば以下の通り。
- エッゲンベルク城(Schloss Eggenberg)
- シュロスベルク(Schlossberg)
- 王宮 – 二重の螺旋階段(Doppelwendeltreppe)
- アッテムス館(Palais Attems)
- グラーツ大聖堂(Dompfarre Graz)
- マウソレウム – 霊廟(Mausoleum)
- 聖血教区教会(Grazer Stadtpfarrkirche)
- 聖母救済教会(Mariahilferkirche)
- 武器博物館(Landeszeughaus)
- 鐘楼広場(Glockenspielplatz)
- ラントハウス – 州庁舎(Landhaus)
- ゲマルテスハウス(Gemaltes Haus)
- グラーツ歌劇場(Opernhaus Graz)
- グラーツ大学(Karl-Franzens-Universität Graz)
ウィーンからの移動方法(一例)
ウィーン「Meidling」駅→電車→グラーツ(片道約2時間半)
エッゲンベルク城
Eggenberger Allee 90, A-8020 Graz
ザルツカンマーグート地方のハルシュタットとダッハシュタインの文化的景観
Kulturlandschaft Hallstatt–Dachstein / Salzkammergut
世界の湖岸で最も美しい街。
もはや観光理由としてこれ以上ないほどシンプルで納得できる、世界が認める評判の場所です。
ハルシュタット湖と湖畔に佇む小さな街並みの景観写真はもはやオーストリアの観光ガイドには欠かせない程の絶景といえるもので、人口1,000人にも満たない、徒歩で片道たった30分程度で端から端まで行けてしまうこの街の大きさからは考えられないほど、世界中からの旅行客で賑わっています。
さらにその価値を押し上げるのが周囲の大自然。
共に世界遺産として登録された、オーストリア中央部の最高地点であるダッハシュタイン山塊やこのハルシュタットが所属するザルツカンマーグート地方の恵まれた山や湖は、スポーツも楽しめるレジャー・保養地として歴史的にも観光産業の発祥の地として認められています。
見どころ
絶対に外せないものの1つがハルシュタット塩抗です。
人口のハリボテではない本物の塩抗内の様子を伺うことが出来るほか、ラストの特大滑り台で歩いた疲れも吹き飛びます。
また、ハルシュタット湖の遊覧船も外せません。
思い出に残るシャッターを切るならば、街から撮る湖、湖から撮る街並みどちらも甲乙つけがたいものです。
通常オーストリア内ではあまり食べられない魚料理も味わうことが出来ます。
湖畔の「塩の町」という事もあって、ニジマスの塩焼きが有名で、街中のレストランの多くで提供されています。
周辺にある観光施設・名所など
特に有名な観光ポイントを挙げるとすれば以下の通り。
- マルクト広場(Marktplatz)
- 世界遺産展望橋(Aussichtsplattform “Welterbeblick”)
- ハルシュタット博物館(Museum Hallstatt)
- クリッペンシュタイン(Krippenstein)
- ルーテル教会(Evangelische Kirche Hallstatt)
- マンモス洞窟(Mammuthöhle)
- ハルシュタット納骨堂(Beinhaus in Hallstatt)
ウィーンからの移動方法(一例)
ウィーン「Meidling」駅→電車→リンツ→電車→Bad Goisern Jodschwefelbad→バス→ハルシュタット(片道約4時間)
ヨーロッパの大温泉保養都市群
Bedeutende Kurstädte Europas
ドイツ・オーストリア・ベルギー・フランス・イタリア・イギリス・チェコの7か国に存在する11の天然鉱泉による温泉都市の総称です。
オーストリアではウィーンの南に位置する人口約2万の小さな町「バーデン・バイ・ウィーン(Baden bei Wien)」が該当します。
見どころ
有名なクラシック作曲家ベートーベンも滞在していたという硫黄泉の湧く温泉地。
リウマチ・循環器疾患・骨折等の治療にも効果があるとされており、小さいながらも市内にはいくつもの温泉施設・マッサージ店・アロマ販売店等が立ち並びます。
ウィーンから電車1本で行けることもあり、肌寒い冬に浸かる温泉は日帰り旅行としてもおすすめです。
ウィーンからの移動方法(一例)
ウィーン「Meidling」駅→電車→バーデン(片道約20分)
ウィーン・バーデン間専用のローカル電車もあります。
ウィーンKarlsplatz(Resselgasse)→電車→バーデン(片道約1時間)
ゼメリング鉄道
Semmeringbahn
オーストリアの南東部、ニーダーエスターライヒ州・シュタイアーマルク州の境界にそびえたつゼメリング峠。
首都ウィーンと第二の都市グラーツやイタリア・スロベニア等の近隣国都市への移動にも通過する峠ですが、ここを通る山岳鉄道が「ゼメリング鉄道」です。
見どころ
全長41.825km・高低差は460mにもなり、広大な森林のさらに上方を通過する列車からの景色は格別。
ウィーンからの移動方法(一例)
世界遺産としてはウィーンとグラーツ・クラーゲンフルトやフィラハ等を結ぶ路線自体を指します。
そのため、これらの都市間を移動する途中でその景色を見渡すことが出来ます。
ただし、同じ行先であっても路線によっては別のルートを通るものもあるため、通りたい場合は事前のルート確認が必要です。
ヴァッハウ渓谷の文化的景観
Wachau
オーストリアを流れるドナウ川流域の内でウィーンとリンツの間、国内北部にある山々に挟まれた36kmほどの地帯が「ヴァッハウ渓谷」と呼ばれる場所です。
この地帯には古代の時代の遺産・痕跡が存在しており、特に崖の上にそびえたつ世界的に有名な修道場「メルク修道院」が大人気のエリア。
このバロック建築による修道院には中世時代の書物・絵画・楽譜などが図書室に保管されています。
見どころ
この渓谷を実際にクルーズ船で観光するツアーが世界中からアクセスを集めており、1日費やしてでもクレムス・アン・デア・ドナウ~ヴァッハウ渓谷~メルクを遊覧することをおすすめします。
周辺にある観光施設・名所など
- メルク修道院
- シェーンビューヘル城(Schloss Schönbühel)
- アックシュタイン城(Burgruine Aggstein)
- ゲットヴァイク修道院(Göttweig Abbey
ウィーンからの移動方法(一例)
公共交通機関で陸路を行く場合は
ザンクト・ペルテン経由(片道約2時間半)
ウィーン「Meidling」駅→電車→ザンクト・ペルテン→電車→クレムス→Weißenkirchen in der Wachau
トゥルン経由(片道約2時間)
ウィーン「Heiligenstadt」駅→電車→クレムス→Weißenkirchen in der Wachau
があります。
修道院があるメルク経由でも行くことができ、
メルク経由(片道約2時間半)
ウィーン「Meidling」駅→電車→ザンクト・ペルテン→電車→メルク→バス→Spitz / Donau Hinterhaus→バス→Weißenkirchen in der Wachau
という経路もあるため、行きと帰りで違う景観を楽しみたい場合はおすすめです。
しかし、ヴァッハウ渓谷の景観を最も楽しめるのは陸路ではなく航路。
クレムス~ヴァッハウ~メルク
の間は、有名なドナウ川クルーズ船ツアーが運航しています。(冬季を除く)
最長経路(片道2時間半~3時間程度)の往復チケットでも37,50ユーロ程なので、クルーズ船の運航している夏季の訪問であれば是非おすすめしたいツアーです。
フェルテー湖・ノイジードル湖の文化的景観
Neusiedler See
複数の小さな町が周りに点在するオーストリア西部の大きな湖。
面積の約3/4がオーストリア、残り1/4がハンガリーにまたがっています。
上述の通り、昔からこの湖の周辺には色々な文化が集まる町が発展してきた歴史があり、湖そのものが世界遺産というよりは、この一帯全てが高い価値を認められている一味違った観光地です。
見どころ
毎年夏には約20万人が訪れる湖上の幻想的なオペレッタ音楽祭「メルビッシュ湖上音楽祭」や水泳大会が開催されています。
また、ノイジードラー・ゼー – ゼーヴィンケル国立公園が隣接しており、美しい自然が堪能できる場所でもあります。
ワインの名産地としてもその名を知られており、自分用にあるいはお土産に銘酒を持ち帰るのも良いかもしれません。
ウィーンからの移動方法(一例)
フェルテー湖・ノイジードル湖は同じ1つの湖の名称で、「フェルテー湖」はハンガリー語、「ノイジードル湖」はドイツ語での呼称となります。
そのためここではノイジードル湖で統一してご紹介します。
ノイジードル湖に行く、というのは実際には
- ノイジードル湖の周りの町に行き、そこから徒歩で散策する
という意味です。
この湖の周りにあるいくつもの小さな町があり、散策したい町に合わせて経路が多少異なります。
ウィーン「Hauptbahnhof」駅→電車→Neusiedl am See(片道約40分)
ウィーン「Hauptbahnhof」駅→電車→Neusiedl am See→電車→Weiden am See(片道約1時間)
ウィーン「Meidling」駅→電車→Ebreichsdorf→バス→Eisenstadt→バス→Rust am See Franz-Josef-Platz(片道約1時間半)
ウィーン「Meidling」駅→電車→Ebreichsdorf→バス→Eisenstadt→バス→Mörbisch am See Ödenburger Straße(片道約2時間)
一番近いのは「Neusiedl am See(ノイジードル)」の町ですが、「Rust am See(ルスト)」はワイン、「Mörbisch(メルビッシュ)」は野外オペレッタと小さいながらも散策しがいのある町が並ぶため、多少移動時間を割いてでも訪れる価値はあります。
また、もし湖の東側にある国立公園もセットで訪れたい場合は、
ウィーン「Hauptbahnhof」駅→電車→Parndorf Ort→バス→Neusiedl am See→バス→Illmitz Obere Hauptstraße(片道約2時間)
等の経路を取る形になります。
アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群
Prähistorische Pfahlbauten um die Alpen
杭上住居というのは高床式住居のことで、柱等でその床面を地面、水面より高くした建物のことです。
アルプス山脈周辺には紀元前5000年頃から前500年頃に建てたとされる杭上住居の遺跡群が残っており、周辺6カ国111件の遺跡群の内、オーストリアでは国内の湖上に存在する5件が登録されています。
見どころ
湖や湿地上に建てられた丸太の住居というのは世界的にも中々ないもので、RPG等のゲームでしか見かけないような非日常空間を散策することが出来ます。
ウィーンからの移動方法(一例)
オーストリア内の杭上住居群は計6か所。
- Keutschach am See(1か所)
- Attersee am Attersee(3か所)
- Seewalchen am Attersee(1か所)
- Mondsee(1か所)
「Keutschach」以外は場所的に集中しており、「Seewalchen」は「Attersee」へ向かう途中にあります。
「Mondsee」もその側にあるものの直通する公共交通機関が無く、最寄りの「Unterach/Attersee」までバスで来た後は車かタクシーで辿り着く他ありません。
景色が良いので徒歩でも行けなくは無いですが、約2.7kmと自転車ならまだ検討の余地はあるかもしれない距離感です。
また「Keutschach」「Mondsee」にあるのも1か所だけなので、余程時間に余裕がある場合以外は「Attersee」だけで十分かもしれませんね。
Keutschach am See(片道約5時間)
ウィーン「Meidling」駅→電車→クラーゲンフルト「Hauptbahnhof」駅→バス→Keutschach am See Gemeindeamt
Attersee am Attersee(片道約3時間)
ウィーン「Meidling」駅→電車→Vöcklabruck→バス→Attersee Bahnhof (Nußdorfer Straße)
ウィーン「Meidling」駅→電車→Vöcklabruck→電車→Vöcklamarkt→電車→Attersee Bahnhof
Seewalchen am Attersee(片道約3時間)
ウィーン「Meidling」駅→電車→Vöcklabruck→バス→Litzlberg/Attersee Ort
Mondsee(片道約3時間半)
ウィーン「Meidling」駅→電車→Vöcklabruck→バス→Unterach/Attersee→車/タクシー→Seeache Brücke
ローマ帝国の国境線(ドナウ / リーメス)
Limes (Grenzwall)
紀元前27年~1453年に栄えたローマ帝国時代の国境長城跡、それが「リーメス(Limes)」です。
ドナウ川からライン川まで広大に設けられており、ドナウ川が流れる現代のオーストリア領土内にもその一部がまたがっています。
見どころ
外敵を撃退するため長城にはある程度の間隔で砦や物見櫓も建てられており、実際に目にすると当時の建築様式や傷跡を感じることが出来ます。
ウィーンからの移動方法(一例)
リメス(ローマ帝国時代の防砦)は1か所ではなく、オーストリア国内に広く点在しています。
全てを見て回るのはあまり現実的ではないため、一番手軽にその一端を見ることが出来る場所として、ウィーン市内のミヒャエル広場にある遺跡が挙げられます。
Michaelerplatz 5, A-1010 Wien
カルパティア山脈とヨーロッパ各地の古代及び原生ブナ林
Alte Buchenwälder und Buchenurwälder der Karpaten und anderer Regionen Europas
現代でも手付かずに残されているヨーロッパブナ林の多彩さが認められている世界遺産です。
カルパティア山脈というのはスロバキア・ポーランド・ウクライナ・ルーマニアと・チェコ・ハンガリー・セルビアにまたがる全長約1500kmの巨大な山脈。
オーストリアは直接これにかかるわけではありませんが、この山脈にも存在するヨーロッパブナの原生林が国内にも存在するため登録国の1つとなっています。
見どころ
その名の通り、ヨーロッパブナ林はヨーロッパ周辺の気候環境でしか見られないもので、地面にはわずかしか日光が届かない山間部の森林のみの場所です。
他の世界遺産と違い人が見て美しいかどうかの観点ではなくその生態系に価値が見出されているため、他の観光地と違いここを訪れるのはあまり簡単ではありません。
しかし国内2か所はいずれも訪問が不可能な場所ではないため、雄大な自然の美しさを堪能できるオーストリアの秘境として魅力ある場所になっています。
ウィーンからの移動方法(一例)
オーストリアではヨーロッパブナの森林として「デュレンシュタイン(Dürrenstein)」「カルカルペン(Kalkalpen)」の2か所が該当します。
Dürrenstein
山脈内のため、最寄りの「ゲストリング・アン・デア・イップス」までのアクセスルートです。
ウィーン「Meidling」駅→電車→アムシュテッテン→バス→Pockau b.Gaming Maut/Abzw Gresten→バス→Göstling/Ybbs(片道約3時間)
ウィーン「Meidling」駅→電車→ザンクト・ペルテン→電車→Laubenbachmühle→バス→Neubruck b.Scheibbs Alte Fabrik→バス→Göstling/Ybbs(片道約3時間)
Kalkalpen
カルカルペン国立公園に最も近い、「ヴィンディッシュガルシュテン(Windischgarsten)」までのアクセスルートです。
ウィーン「Meidling」駅→電車→リンツ→電車→Windischgarsten Bahnhof(片道約2時間半)
ウィーン「Meidling」駅→電車→レオーベン→電車→Windischgarsten Bahnhof(片道約4時間半)
オーストリアの世界遺産すべてを一周・観光することは可能?
出来る・出来ないで言えばもちろん可能ではありますが、かかる費用・時間を考えるとあまり現実的ではありません。
先史時代の杭上住居群・原生ブナ林等、そこへ行くための公共交通機関の選択肢があまり多くなく移動を制限されるものもありますし、ローマ帝国リーメスの様にそのすべてを見て回ろうと思ったらかなりの移動回数が必要なるものもあります。
もちろん絶対にこれらを生で見たい!という場合には行くべきだと思いますが、オーストリア旅行・観光という目的で考えた場合、限られた時間を有効に使う場合ある程度の取捨選択がベストかと思われます。
世界遺産イコール美しい観光名所というわけではない
ここで一つ知っておきたいのが、世界遺産へ登録される理由というのはその美しさだけが評価基準ではないという事です。
例えばゼメリング鉄道が世界遺産に登録された最大の評価基準は「自然との調和」、景観デザインや建築様式が認められてのものです。
杭上住居群についても、保存状態の良い遺跡群がアルプス周辺地域における農耕生活の様子を理解する上で非常に重要な貢献をしたこと等がポイントとなっています。
ブナ林も、重要な生態学的・生物学的プロセスを示す顕著な見本であることが評価の理由に含まれています。
つまり、世界遺産に登録されるのは何も観光地として価値が高いからという理由ではなくても良いわけですね。
言い換えると限られた観光・旅行において世界遺産かどうかを主軸に目的地を決めるのはベストな方法とは言えないことになります。
もちろんウィーンその他都市の様に、地区自体がその価値を認められている場所へは行きやすさ・散策しやすさも兼ね備えているので優先順位を高くても良いかと思いますが、移動の不便さや費用がかかる等のデメリットがある場合には本当に見たいのかどうかをよく検討した方が、より充実した旅行プランになるかと思います。
一周できる最短ルートと満足できる最低滞在日数
それでも、どうしても全部見て回りたい…!という場合にはどのルートで回るのが無理なく最短なのか、ご参考までに検討してみました。
オーストリアへの入国はほとんどの場合飛行機での乗り入れになるかと思いますので、シュヴェヒャート国際空港を起点にウィーンへ向かう所から始まります。
なお、杭上住居群はAttersee、リーメスはウィーン「Michaelerplatz」、ブナ林はヴィンディッシュガルシュテンへ訪れる想定で計算しています。
- ウィーン・シュヴェヒャート国際空港
- ウィーン(3日)
- ローマ帝国の国境線・リーメス(0.1日)
- シェーンブルン宮殿(0.7日)
- ノイジードル湖(0.5日)
- バーデン・バイ・ウィーン(0.5日)
- ゼメリング鉄道(0日)
- グラーツ(1.5日)
- 古代及び原生ブナ林(1.5日)
- ハルシュタット(1.5日)
- 杭上住居群(0.2日)
- ザルツブルク(1.5日)
- ヴァッハウ渓谷(0.7日)
ざっくりと言えばゼメリング鉄道が通る下オーストリアから回り始めてザルツブルクでUターンしてウィーンに帰ってくる形で、一応この通りに行けばオーストリアの世界遺産を1周した、と言えるかもしれませんが、この通りの最低日数で行けばかなり疲れます。(それでも移動時間を含めれば約2週間かかります)
世界遺産以外にもおすすめの場所はたくさんある
地図からも分かる通り、世界遺産だけを拾っていってもオーストリアの全てを回れるわけではありません。
この国にはインスブルックやリンツ、フィラッハ等まだまだ一度は訪れて損はない街がいくつもあります。
一番大事なのは自分にとって充実した旅行体験をおくること。
世界遺産も観光の目的地としては大事な基準にはなりますが、自身が見たい・行きたいと思うかどうかが最も大事な旅行プラン作成の肝です。
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