オーストリアでの生活で立ちはだかる壁の一つにオーストリアドイツ語があります。
日本語で言うところの大阪弁・京都弁の様なもので、一般的なドイツ語を話せれば概ね分かるけどたまに意味が分からない、くらいの違いがあります。
ここで言う一般的なドイツ語とはドイツのどこどこで使われている!とか「hochdeutsch」だぞ!とかではなく、日本で売っている教材で習うドイツ語という程度の意味です。
(何でドイツが標準なんだということになってしまいますので…)
オーストリアの訛りが難しい理由は大きく分けて3つあります。
発音が違う!
訛りなので当然ですが、
Zwei(ツヴァイ)がツヴォア、ツヴェーに
Zwanzig(ツヴァンツィク)がツヴォンツィヒに
Siebenundzwanzig(ズィーベンウントツヴァンツィク)がスィーベンウントツヴォンツィヒに
なったりします。
ざっくりですが「ァ」が「ォ」に、語尾の「ク」は「ヒ」に、語頭のザ行がサ行になるというのが違いの8割位かと。(他にもありますが割合は少ないです)
特にこの「ァ」が「ォ」になるのが大きな違いで場合によっては未知の単語に聞こえる他、全体的にこもらせる印象があり、さらに語頭・語尾がマイルドな方向に向かっているので結果として「聞き取りにくい」仕上がりになっています。
文法が違う!
過去分詞が複数ある!
両方使われるようですが「salzen」の過去分詞が「gesalzen」「gesalzt」という風に「〜en」「〜t」のパターンを持つ動詞がいくつかあります。
名詞の性が違う!
ドイツ語を覚えるのに面倒なことの一つに名詞の性3種がありますが、オーストリアではさらに面倒な事になっています。
das Brösel – der Brösel
das Monat – der Monat
das Service – der Service
等々。
一応どちらでも間違いではないという扱いなので、教材で習う方のみ覚えておいてこういうのもある、位に知っておくだけで良いと思います。
そもそも単語が違う!
1月はドイツ語でなんというでしょう?
「Januar」ですか?「Jänner」です。2月も「Februar」ではなく「Feber」を使う人もいます。
おそらく多くの人がオーストリアに来て「Erdapfel」てなんだよ?ニュートン?と首を傾げる様に、オーストリアでは同じ物事を意味していても全く違う単語名が使われていることがあります。
例えば、
Faschiertes – Hackfleisch(ひき肉)
Sessel – Stuhl(椅子)
Germ – Hefe(酵母)
Stiege – Treppe(階)
Marille – Aprikose(アンズ)
Obers(Rahm) – Sahne(クリーム)
Fisole – Gartenbohne(インゲン)
Paradeiser – Tomate(トマト)
Kipferl – Hörnchen(クロワッサン…的な)
Melanzani – Aubergine(なすび)
Palatschinke – Pfannkuchen(クレープ…クレープ?)
Sauce – Soße(ソース)
Schlagobers – Schlagsahne(ホイップクリーム)
Stelze – Eisbein(豚脚)
Sturm – Federweißer(シュトゥルム、詳しくはこちら)
Lenker – Fahrer(運転手)
heuer – in diesem Jahr(今年)
Bub – Junge(子供)
Kren – Meerrettich(ホースラディッシュ・西洋山葵)
Leiberl – T-shirt(Tシャツ)
Sackerl – Tüte(袋…アイスの方じゃないです。詳しくはこちら)
食べ物多めですがまだまだたくさんあります。
特に「Sackerl」は私もそうでしたが最初分からない方はたくさんいるんじゃないでしょうか。
前述の独特な発音と相まって、ドイツ語を勉強してきた方でも会話の中で「え?何?」と聞き返したくなる時がしばしば起こるのがここオーストリアです。
聞き取れなかった時は?
もちろん聞き返すしかないのですが、ちょっとした会話テクニックを一つ。
大抵の場合、そのまま「Bitte?(ビッテ?)」と聞き返してしまうと相手はそのまま同じことを言ってくれると思います。(もしかしたらゆっくりと)
でも例えば「Brauchen Sie Sackerl?」と聞かれてSackerlが分からない時にもう一回同じことを言われても意味がないですよね?
なのでそういう時は「…Sackerl? 😕 」とか「…Was ist “Sackerl”? 🙁 」という感じでちょっと戸惑い気味に(重要!)分からない部分だけを聞き返すようにすると、相手も「Sackerlは…これや! 😎 」と指さしたり対応してくれ易くなるのでおススメです。
なお、オーストリア訛りと一言に言っても地方によって色々な訛りがあり、インスブルックではこう言うけどウィーンではそれはないわ、とかがたくさんあります。
これはドイツの各地方・スイス含め訛りというよりその地方でのドイツ語、という認識らしいです。
そのため訛りの入ったドイツ語を話す方に対して訛ってないドイツ語で話してくれというのは親しい間柄でない限り中々失礼ですし、その地方のドイツ語に自信を持って話されている方もいるのでマナーとして注意しておいた方が良いと思います。
もちろんそんなの全然気にしないよというオーストリア人もたくさんいますけどね。