もちろんこうすれば絶対100%上がる方法はなんてものはありませんが、それでもお給料(Gehalt)を上げるためのセオリーというものは存在します。
準備無しに無策でお賃金交渉をしたところで断られるのは当たり前。事前に入念な準備をするのが出来るヤツってわけです。
正直ちょっとガチめの内容なので普段すっとぼけたサイトの記事にするのはちょっとためらわれたものの、今回お問い合わせもあったのでご紹介させていただきます。
私自身今は個人事業主の身でえらそーに語れるご身分ではないんですが、以前は何年もお給料を頂くサラリーマンをやっていました。
オーストリアに限らず海外で働くのは傍から見ればカッコいいものかもしれませんが、当の本人からすれば慣れるまでは不安でいっぱいの毎日です。
オーストリアではボーナスの支給が法律で定められていることもあり、ほんの少しでも給料が上がればその分ボーナスにも反映され結果年収が大きく上がる可能性も秘めています。
海外で働く多くの方は一人での生活だと思いますし、そうでなくても家族を養わなければならない方も多いはず。
そんな方々のお賃金が上がるヒントになれば幸いです。
基本は直談判!
日本の場合、規定が揃っている会社であれば少なくても年に1回査定を会社が行ってくれますし、勤務年数が上がればほんの少しずつでも年収が上がるのが普通かと思います。
しかしオーストリアでは日本に比べ実力評価が優先される風習がかなり強く、黙っていても誰かが気にかけてくれるようなことはほぼありません。
年収を上げたければ自分で交渉して自分で勝ち取っていく気概が必要になります。
気を付けたいのが「めちゃくちゃ優秀だけど待遇について何も言わない」ひと。
我々日本人からすれば文句も言わず黙々こなす非常に素晴らしい美徳とも思えますが、オーストリアではただ単に待遇について不満が無いと取られるため、下手するとずっとそのままの待遇です。(もちろん待遇に文句を言ってるだけもダメですけどね)
個人経営のお店で店主の方がとても優しい方だと気にかけてくれたりもあるのですが、社員数が10人とかのレベルになってくるとなかなかそういうこともないかと思いますのでアピールが必要になってきます。
会社の売り上げを知る
まずはお勤めの会社が儲かっているのか、そうでないのかを知るのが最初に行うべきことです。
当たり前の話ですが、どれだけ優秀な方がいても慢性的に赤字の会社が一社員のお給料を上げてくれる可能性はほとんどなく、あるとすれば人員整理を伴うレベルの大改革の時や役職付きの場合などの例外時のみ。
特に、1~数店舗程の飲食店や社員十数人程の規模の会社であれば、儲かってないと交渉が上手くいく可能性はゼロと言っても良いかと。
なのでその会社の売り上げ(Einnahmen・Umsatz)・利益(Gewinn・Profit)が普段どれくらいなのかを知る必要があるわけですね。
公開されていればベストですし、公開されていなければボスや経理等知っていそうな人にそれとなく聞いてみましょう。
ちなみに経験上、ボスに聞いて儲かっている場合に返ってくる答えは「儲かっているよ!」とか「順調だよ!」とかです。
人にもよるのかもしれませんが、「ナーヤー…」とか「右肩上がりに順調に行く兆しが見えている…」みたいな煮え切らない回答の場合はだいたい上手くいっていません…。
もしあまり改善の兆しが無い場合には…転職という選択肢も検討するだけならタダです…。
その会社のコア業務を知る
これは業種や会社の規模によってかなり変わってくる部分です。
例えばパン屋さんを例にとってみましょう。
店舗数10店舗等の大企業パン屋にとって、最も売り上げに直結する業務はなんでしょうか?
私もパン屋で働いたことはありませんが、少なくともレジ打ちやパンを焼く業務ではないと思います。
おそらく何のパンを売るかを決める企画やレシピ・原価を決める業務等が重要そうですね。
では1~2店舗程の個人でやっているような会社のパン屋ではどうでしょうか?
同じく企画やレシピもたしかに重要ですが、この規模だとニッコニコのレジ打ちやマシンの様にパンを焼ける人が1人いるだけでも大分お店全体が助かると思います。
何が言いたいのかというと、なるべく売り上げに直結するようなポジションをゲットする必要があるという事です。
その上で「コイツがいなきゃ回らない」とか「コイツが辞めるのはヤバい」といった評価を勝ち取ることできれば、待遇交渉はほぼ上手くいきます。
上述の様に同じ業種でも会社の規模によって何が重要なのかは異なり、大企業パン屋のレジ打ちのスタッフが直談判するのはとんでもなく評判が良くなければ難しいですし、会社からすれば最悪「辞められるのは引き留めたい」とまでは思われません。
しかし個人店でとても接客対応の良いレジ打ちの方が辞めるとなれば引き留めるのは十分な理由になります。
もちろん大企業パン屋のレジ打ち自体が悪いというわけではなく、なるべく自分の努力が評価されやすい環境に身を置くのが重要という意味です。
尖ってても良いので評価を得る
ポジションを得ることが出来たら、とにかく何でも良いので目立つ評価を得ることに努めます。
もちろん一朝一夕にはできない部分でもありますがこれが最も重要です。
ポイントはお客さんの評価ではなく、なるべく形に残る社内の評価を得ること。
例えばレストランのウェイターならニコニコ接客でお客さんに満足して帰ってもらうのではなく(それも大事ですが)より多くのチップを頂く等。
上述の個人店パン屋の例なら「コイツがレジに立った時だけなんか売り上げ多くね?」「恐ろしく早いパン焼き、俺でなきゃ見逃しちゃうね」という社内の評価が重要です。
実例として私の場合は、元々ホームページを作る会社でサイトの修正「だけ」を黙々とこなすポジションに身を置いていました。
プログラミング自体、性に合っていたというのもありますが、徐々にサイトのコーディングにも携わるようになり、とにかく一番正確に早くコーディングできるヤツという認識をされるよう努めたわけです。
しかしホームページ制作の場合デザインや構成の検討・打ち合わせ等いくつかの工程を経て作られるもののため、コーディングだけが早くても制作スケジュールが大きく短縮できるわけではありません。(つまり会社から見ればそこまで売り上げ・評価につながりません)
そこで徐々に他の工程にも浸食を始めました。
デザインもまずはバナーだけとか、構成も1ページだけとか徐々にやらせてもらえる範囲を増やしていった上で、同じ様に一番早くできるヤツという認識をされるよう努めました。
そこまでくれば後は簡単で「コイツにまるごと任せればとにかく早くやってくれる」と認識してもらうことができ、イコール「コイツがいなきゃ回らない」状況で「おちんぎんもっとちょーだい! 🙂 」と交渉することが出来たわけです。
交渉の際に気を付けたいこと
「あたしゃこれくらい欲しいよ!」と自分の希望だけを伝えてもなかなか上手くいきません。
重要なのは「会社の利益」にどれだけ貢献しているかという数字です。
例えば
- 自分がこの業務を担当していると通常時に比べて売り上げが〇〇%上がる
- 自分はひと月でいくらいくらの売り上げを上げている
等です。
その上で「今自分が頂いているお給料は○○ユーロほど。会社の利益への貢献度的にもう少し交渉できませんか?」とあくまでその会社の立場や数字を尊重して交渉すると建設的な交渉が出来ます。
これは金額的なものがベストですが時間の短縮や費用の削減などでも大丈夫です。
何かしらの数字があれば、主観的な評価で物申しているわけではないと分かってもらえます。
あと「交渉なんてして嫌われたらどうしよう…?」という不安もあるかと思いますが、その辺は結構ドライです。
もし交渉がダメだったとしても「じゃあもっと評価頂けるようになってから再挑戦させてくださいね☆」なんて感じで引っ込めば良いので。
最悪それで目の敵にされるのであれば、そういう人が人事に立っている会社と見切りも付けやすいですしね。(ゲス)
最初の交渉がいちばん
ここまで読んでいただければお気づきかと思いますが、あとから給料を上げるのは言うほど簡単ではありません。
私の場合も上述でさらっと上手くいった感じに書いてますが、そんなバリバリに頑張れていたわけではないので実際には数年かかっています。
もしこれからオーストリアで就職しようと思っている方や転職をご検討されているのであれば、その会社に入る際の最初の面接で給料の交渉をするのがいちばんです。
これはアメリカや他のヨーロッパでも同じかと思いますが、こちらでは日本と違って最初に給料交渉をするのはいたって普通。あんまり無茶すると交渉決裂の危険性もありますが、事前に相場を調べてちょっと上を狙うのは全然アリなので恐れず挑戦して損はないかと思います。
オーストリアでお給料を上げたいと思っている方は是非一度ご検討してみてください。