以前こちらの記事でもご紹介した様に、日本の卵とオーストリアの卵ではその扱い方から食べ方まで異なる文化が存在しています。
たかが卵と言っても知ってる・知らないの差が場合によっては病院のお世話になる程の事態になり得るため頭の片隅に入れておいて損はありません。
そこで今回はオーストリアの卵について知っておくべき点をいくつかご紹介します。
古い卵かどうか簡単に見分ける方法
よく卵を割ってお皿に移し卵黄がこんもりしていれば新鮮だというのは聞きますが、この方法は卵を割らないと判断することが出来ないため使いどころが限られますよね。
古いかどうかは卵を割る前に知りたいものですが、実は簡単。
コップにお水を入れてその中に卵を静かに入れるだけ。
- そのままコップの底に横向きに落ちれば新鮮(約1週間以内)
- コップの底で卵が立てば少し古い(約2週間以内)
- 浮いてきたら古い(約1ヶ月以上)
卵の底側には「気室(Luftkammer)」という空気が入っている部分があり、卵が古くなるにつれ卵内の水分が蒸発しこの気室の割合が大きくなってきます。
一定のラインを超えると浮き輪の様に水底から卵を浮かせるようになるため、その卵が古いかどうかを判断できるというわけです。
※コップの水は使用後必ず捨て、コップも十分に洗ってください。
ちなみに日本の卵であれば約1週間以内のものは生食でもOKですがオーストリアではそうはいきません。
そもそも生食前提で卵を洗浄しているのは日本くらいなもので、海外ではそこまで洗浄されておらず卵の殻にサルモネラ菌が付着しています。
卵を割る際にどうしても卵の殻に中身がタッチしてしまうので、実質生卵を食べるのはサルモネラ菌を食べてしまう可能性が非常に高いという寸法ですね。
実際オーストリアで卵を買った経験がある方はご存じの方に、なんならサルモネラどころか鶏の羽や糞まで付着している卵がパッケージに入っていることもザラにあります。
そのためオーストリアでは卵は生では食さず必ず十分な加熱が必要で、卵の殻を触った手や容器・食器類も十分に洗うようにしてください。ガチで。
卵にコードが書かれている?
もしお手元に卵があれば見てみてください。
卵の底や側面に必ず数字や文字の羅列が見つかるはずです。
卵に書かれたコードの中身
実はここには卵の飼育環境、生産国、卵の大きさ、発送日、発送番号等の情報がリンクされていて、「Eierkennzeichnung(卵の識別番号)」と呼ばれています。
オーストリアに限らずEU圏内ではこのシステムで統一されていて、卵1つ1つが一体どこで生まれたものなのかを把握しているのです。
このコードは誰でも閲覧できるデータベースとして公開もされており、以下のサイトで自分が手に持っている卵の番号を調べることもできます。
なので基本的にはEU国内で流通・販売される卵には全てこのコードが記載されることになっています。
もしコードの記載が一切無い卵に出くわした場合、出自が謎なので購入するのは控えた方が良いです。
※ただ、あくまで流通する卵への義務なので「親戚のおじさんが農場やってて今朝生まれたての卵くれたんだ!」みたいなことはあるのかもしれません。
コードの書式はこのような形になっています。
- 2-AT-1234567(-8)
2つ(場合によっては3つ)のハイフンで区切られており、左から
- 卵の飼育環境(0~3の数字)
- 生産国(2文字のアルファベット)
- 生産者番号(複数桁の数字、ハイフンで区切られることもある)
の順になっています。
卵の飼育環境
卵の飼育環境には0~3の数字が入る可能性があり、品質の良い卵程数字が少なくなります。
- 0:有機飼育(Ökologische Erzeugung)
- 1:放し飼い(Freilandhaltung)
- 2:畜舎(Bodenhaltung)
- 3:ケージまた小グループでの飼育(Käfighaltung, auch Kleingruppenhaltung)
「3」の内ケージ飼育はオーストリアでは2009年から、ドイツでは2010年から、EUでは禁止2012年以降禁止されているため、オーストリアのスーパーで見かけることはあまりないかもしれません。(小グループでの飼育は禁止ではないです)
有機飼育とはスーパーでよく見かけるBio(オーガニック)のことです。
ニワトリに与えるエサも余計な添加物などを使わず、また各ニワトリのスペースも放し飼いに比べ広く取らなければならないため、ワンランク下の放し飼いに比べかなり厳しい基準が設けられています。
そのためこれをクリアした有機(オーガニック)卵は価格も他に比べ一段と高く、またその味の濃厚さもハズレなく保障されています。
実質スーパーで安く売られているのは「2」の畜舎もので、ちょっと高めのが「1」の放し飼い、一番高い「0」の有機飼育ものは例えばBillaの「Ja! Natürlich」ブランドですね。
生産国
生産国には2文字のアルファベットが入り、ここオーストリアで生産されたものには「AT」が入ります。
他にも
- ドイツ:DE
- スイス:CH
- イタリア:IT
等が存在します。
生産者番号
生産者番号には複数桁の数字が入りますが、オーストリアの場合最初にどの州での生産かが記されています。
- 1:ブルゲンラント(Burgenland)
- 2:ケルンテン(Kärnten)
- 3:ニーダーエスターライヒ(Niederösterreich)
- 4:オーバーエスターライヒ(Oberösterreich)
- 5:ザルツブルク(Salzburg)
- 6:シュタイアーマルク(Steiermark)
- 7:チロル(Tirol)
- 8:フォアアールベルク(フォアアールベルク)
- 9:ウィーン(Wien)
国産の高級卵の番号は?
上記をまとめると
- 0-AT-○○○○○○
のものが国産の有機飼育された最も価格帯の高い高級卵と見分けることが出来ます。
で、これを知って何になるの?
卵の番号なんて普通に食べている分には全く気にならないものですが、実は知っているとちょっとだけお得なこともあります。
理由①本来の卵の価値を簡単に見分けることが出来る
オーストリアでは食品でも服でも何でもセールをする際の割引率が異常に高く、賞味期限とかが近いわけでもないのに「50%引き」「1個買ったらもう1個貰える」「2個買ったらもう1個貰える」等採算取れてんのかこっちが心配になるくらいのお買い得が日常茶飯事です。
卵についてもそんな感じのセールがちょくちょく行われるのですが、上述の通り卵の記号を見ればどんな卵かが簡単に分かるため、
- 元々安い卵が割高に設定されそれをセットで安く見せているのか
- 元々高い卵が本当に安くなっているのか
の判断が出来るようになるわけです。
特に後者のセール品があれば仮に多少高くても買う価値があるという事になりますね。
理由②美味しい卵が選べるようになる
高級卵は普通のものよりも美味しいものが多いため、卵焼きや目玉焼き等、卵のポテンシャルに全てを賭けるような料理をする際には特にその違いが顕著に分かります。
逆に揚げ物の衣に使う場合やハンバーグのタネにする場合、パンの材料にする場合なんかだとその差はほとんど分からないため(分かる人もいるのかもですが…)、あえて高級卵を使う必要はないかもしれません。
理由③環境や有機食品の応援が出来る
なんのこっちゃですが、実はこれが高級卵がオーストリアで買われている一番大きな割合を占める理由のようです。
広々とした場所で動ける自由、科学飼料を使っていない高品質なごはん、ストレスフリーな生活の中で生まれる卵には、環境問題や動物愛護の観点からも有機飼料応援の観点からも期待が寄せられています。
そしてこういった卵を日々購入する事自体がその応援の一助となるため、これらの活動を応援する意味で高級卵を買う方が多いそう。
何を優先するかは自分次第
私自身たまに有機等の高級卵パックを買うことがありますが、基本的にはよほどお買い得な時しか買いません。
たまに買って普段食べてる卵との違いを楽しみたいってだけで、ぶっちゃけて言うと個人的には環境問題や有機の応援よりは自分のお財布の中の方が相当重要です。
高級卵は栄養価も高いと言われることもありますが、正直卵を普段食べてるのなら栄養は十分かと思いますし。
しかしオーストリアでは私の様な現金な思考の人間だけではなく、上述の様なもっと崇高な考え方の方々もいるということを頭の片隅に入れておくだけでも、ふとした際の会話で役に立つ時があります。
オーストリアで卵を買う際はそんな話もあったなと思いつつ是非卵の印字をチェックしてみてください。