【外だけ見て満足してない?】ゼロから分かるウィーン市庁舎観光
ウィーン市庁舎(Wiener Rathaus)はその名の通り市庁舎であると同時にウィーンを代表するシンボルの一つ。
私たちが想像するような市庁舎とは思えないかっこよさを放っているため、初めて見に来たときは「あれ…お城かな?」とキョロ見してしまうことと思います。
遠くからでも見える壮麗な外観はもちろん、ここでは夏季は野外映画館・冬はクリスマス市が毎年開かれており、ウィーンに住む人々も観光客もわんさか訪れるイベント会場としても広く知られていますね。
ところがウィーンという街には王宮やら美術館やらそこかしこに観光スポットが詰まっていることや、「市庁舎」という若干真面目な名前に先入観を持たれやすいことから、ちょっと外観だけ見て満足してしまう観光の方が多い場所でもあります。
つまり、この場所の魅力を楽しむなら建物の写真だけ撮って帰るなんてもったいないということです。
例えば現地の人ならまだしもディズニーリゾートに来てイクスピアリだけ見て帰る人はいないですよね?
先に言ってしまうとこの建物、見るべきは外より中なんです。
今回はこのウィーン市庁舎について、初めてウィーンを訪れる方も100%堪能できるようご紹介します。
ウィーン市庁舎へのアクセスと歴史
https://www.wien.gv.at/verwaltung/rathaus/index.html
住所
Friedrich-Schmidt-Platz 1, A-1010 Wien
地下鉄駅U2の「Rathaus」すぐ側に位置しており、旧市街・リンク通り沿いにあるため「Schottentor」「Volkstheater」など近隣駅からも歩いて数分程度で辿り着くことが出来ます。
トラムもリンク沿いを走る1・2・D・71が市役所正面前の停留所を通っています。
ご覧の通り、このウィーンの旧市街を取り囲むリンク沿い(特に西側)にはこの市庁舎の他にもホーフブルグ王宮、オペラ座、国会議事堂、ブルグ劇場、市立公園など、ウィーンの準ランドマーク級の建物がひしめいており、リンクを走るトラムで外を眺めていれば数分おきに車窓からインスタ映えが飛び込んでくるエリアとなっています。
ざっくりと歴史的背景を説明すると、この建物はずっと昔からここにあったわけではありません。
1850年当時ハプスブルク家が支配するオーストリア帝国の時代、多くの郊外が併合されたことでウィーンの面積と人口が大幅に増加したため、手狭になったヴィップリンガー通りの旧市庁舎から移転が決定、1872年から1883年にかけてフランツ・ヨーゼフ1世によって建てられた現在の新市庁舎に移り現在に至る、といった経緯があります。
そのためその外観は19世紀に流行りであったネオゴシック様式の建築デザインとなっており、高さ98メートルの塔、7つの中庭といった部分が特徴です。
ぱっと見「…なんかハリポタ感あるくね?」と思われるのも、ネオゴシック様式という共通点があるからですね。
その全体像としては延床面積は19,592平方メートル、総使用面積は113,000平方メートル、建物の全長は152メートル、幅は127メートルで、1,575もの部屋と2,035の窓があり、サイズ感で言えばまさにお城。
余談ですが1938年にはヒトラーとゲッベルスがプロパガンダに使用した「ヒトラーのバルコニー」と呼ばれる部分があったりします。
インフォセンターもある
市庁舎内にはインフォセンターが設置されています。
各種パンフレット配布、後述のツアー予約、Vienna City Cardの販売、遺失物預かり、駐車券発行、イベント情報の確認など観光の方も利用できるサービスが揃っているので、アルベルティーナ前のインフォセンターが人が多くて億劫という方はこちらでパンフレット等を調達しても良いかもしれません。
インフォセンター営業時間
月~金 7:30~17:00
ウィーン市庁舎で市の手続きとかできるの?
もしかしたら予備知識なしでウィーンに引っ越した方が訪れることもあるのかもしれませんが…残念ながらごく一部を除き出来ません。
ここは市庁舎ではありますが市役所としては機能しておらず、Meldezettelなんかの私たち一般市民が必要とする各種手続きはウィーンの区ごとに設置された区役所で行っています。
逆にこんな荘厳なところで手続きしてみたいですけどね…。
しかし市役所ではないものの、政務が行われる場所ではあります。
現在、この市庁舎にはウィーン市長と知事の執務室、市議会、州議会、ウィーン市議会、ウィーン州政府、その他市の様々な部局が置かれています。
その魅力的な外観から観光スポットとしての側面が目立ちますが、実際には行政的な面でも重要なスポットというわけです。
ウィーン市庁舎の中は見学できるの?
出来ます。そして時間が許すなら是非とも見ておきたいスポットです。
あまり知られていませんが、実はウィーン市庁舎の無料見学ツアーが隔日で行われています。
https://www.wien.gv.at/verwaltung/rathaus/fuehrung/fuss/index.html
ツアー開催日時
月・水・金 13:00(祝日や夏季・冬季休館シーズン・会期日やイベント開催期間を除く)
ツアー費用
無料
ツアーの解説
ドイツ語
※英語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語の無料音声ガイドあり(要写真付き身分証明書)
チケット配布
ツアー当日8:00~10:00、市庁舎内インフォメーションにて最大50名まで配布
※予約不可。先着50名分なくなり次第配布終了。
残念ながら日本語の解説はありませんが、壮麗な内観はぶっちゃけ説明なしでも見ごたえ抜群。
上述の通りウィーン市の重要な政務拠点でもあるため自由にどこでも行けるわけではありませんが、レッドカーペットが敷かれた階段や、舞踏会も開催されているルネッサンス様式の舞踏ホールなど、なんで無料なのか理解できないほど壮麗なツアーです。
その他10名以上のグループの場合は事前予約の上個別のツアー見学が可能です。
ちなみに予約すれば結婚式も挙げることが出来ます。
バーチャル見学もできる
以下ウィーン市のサイトで市庁舎内のバーチャルツアーも公開されています。
https://www.wien.gv.at/verwaltung/rathaus/fuehrung/online/index.html
どんな雰囲気の場所なのかちょっとだけ見てみるだけでも良いかもですね。
市庁舎内のウィーン図書館
https://www.wienbibliothek.at/
この市庁舎には政務に関連するエリアの他、実は図書館もまるごと入っています。
正式名称はWienbibliothek im Rathaus。
ウィーンには観光スポットとしても有名なオーストリア国立図書館や市民が利用する市立図書館など他にも知名度の高い図書館がありますが、ここはウィーン州の州立図書館としてウィーン市の記憶の宝庫とも言える原本資料を多数所蔵する研究図書館で、手稿、書簡、印刷楽譜、楽譜のほか、ポスターや個人文書などのコレクションを所蔵しています。
特に国立図書館と比べられると華やかさは負けますが、それでも落ち着きのある雰囲気の中で実際に蔵書を手に取ったり調べたりすることが出来るため、例えば落ち着いた勉強環境を求めている学生の方には覚えておいて損はない場所と言えます。
もちろん利用は無料で、図書館カードさえあれば誰でも利用することが可能ですが、資料は借りることは出来ず、閲覧室でのみ閲覧可能です。(複製は要許可・有料)
開館時間
月~木 9:00~19:00
金 9:00~17:00
※8月は休館
年中イベントだらけの広場と公園
このウィーン市庁舎の前面にはRathausparkと名付けられた総面積約40,000平方メートルの市庁舎前広場と公園となっており、多種多様なイベントが年中開催されていることで有名です。
特に知名度が高く開催期間も長めなものとしては、夏の野外映画館Film Festival、冬のクリスマス市とアイススケートリンクが挙げられます。
Film Festival Wiener Rathausplatz
https://filmfestival-rathausplatz.at/
35年もの歴史を誇る、夏限定の屋外映画祭です。
毎年6月末~9月初めごろまで開催しています。
市庁舎の前面にはクラシック音楽をはじめ映画やオペラ、ポップコンサートなど様々なジャンルの作品を日替わりで楽しめる巨大スクリーンが設置され、20を超える屋台から好きな食べ物やドリンクを買ってきて飲み食いしながら楽しめます。
日にもよりますが大体1時間半~2時間程度のメインプログラムが夜21時ごろから始まるので、のんびり一人で上映を楽しむのも良し、友達とビール片手にわいわいおしゃべりするのも良しと、地元の人々も連日通うくらい雰囲気の良い場所なので、この時期に旅行で訪れるならぜひ一度は足を運んでおきたいおすすめイベントです。
ちなみにウィーンの夏のおすすめイベントはこちらでもご紹介しています。
Wiener Christkindlmarkt
https://www.christkindlmarkt.at/
ウィーン市内で開催されるクリスマスマーケットの内、50年もの歴史を誇り人気も高いスポットの一つ。
屋台マーケットは毎年11月中旬~12月クリスマスまで、アイススケートリンクは翌年3月上旬ごろまで開かれています。
市庁舎前にはたくさんの可愛らしい木小屋が立ち並び、クリスマスツリーに飾るオーナメントやスノーボールを選びながら、毎年限定のカップに入れたプンシュやグリューワインを飲み体を温めながら、クリスマススイーツやパンに入ったシチューなどを食べ歩く風物詩です。
ウィーンには大小多数のクリスマスマーケットが同時期開かれますが、他のマーケットスポットには無い特徴として約3,000平方メートルのスケートリンクを滑ったり、季節限定のメリーゴーランドや観覧車に乗って冬の眺めを楽しめたりといったことができるのはここだけです。
こちらも同じく、クリスマス時期に旅行で訪れるならぜひ一度は足を運んでおきたいおすすめイベント。
ちなみにウィーンのクリスマスマーケット情報はこちらでもご紹介しています。
その他のイベント
上記以外にも、例えばサーカスや音楽祭、特産品マーケットや子供向けのイベントなどが定期・不定期で開催されています。
しかしながら、何のイベントの開催していない静かな市庁舎広場もまた個人的にはお気に入りの散策スポット。
上述の歴史に少し話が戻りますが、実はこの新市庁舎に移ってからも政務施設が収まりきらなくなり、この市役所の周辺には監査事務所や文化局、連邦計量・測量局といった支所的な建物が集中しているんです。
そのため平日の朝や帰宅ラッシュ時間帯以外はこの市庁舎とその裏側一帯はけっこう静かな場所となっており、人ごみ疲れを癒せる街中の隠れスポットと言えます。
特に気温も丁度良い春・秋のシーズンには、木漏れ日の差すベンチで本を読んだりお昼寝をしたりといった方もちらほら見かけたり。
知る人ぞ知る隠れ家レストラン
名店の多いウィーンゆえか、あるいはこんなところにレストランがあると思われにくい立地なのかは分かりませんが、市庁舎正面の向かって右手側にこの歴史あるレストラン「Wiener Rathauskeller」への入り口があります。
創業は1899年とそこらのレストランよりもはるかに年上で、結婚式や会議・パーティーなどにも対応している実力もお墨付きの名店。市庁舎で開催されるイベント等での料理もここのお店が提供しています。
https://wiener-rathauskeller.at/
基本的にはコース料理となっておりお値段は若干高め。
市庁舎に勤務する人々はもちろん、向かいのブルグ劇場の公演前に立ち寄る方も多いようです。(他にも近くに「Cafe Landtmann」という有名なカフェもあります)
市庁舎の地下にあるというだけあってメニューの多くは「ウィーン風」と料理名に添えられており、格式高いウィーンの味を堪能するならココがおすすめ。(夏季休暇シーズンがあるので注意)
ローストブラーテンを堪能するべし
おすすめはRostbraten(ローストブラーテン)と呼ばれる、ドイツ語圏では伝統的な煮込み牛ステーキをウィーン風にしたもの。
カリカリの玉ねぎを絡めたZwiebel-Rostbraten(ツウィーベルローストブラーテン)やマッシュルームが濃厚なChampignon-Rostbraten(シャンピニオンローストブラーテン)、あるいはエスタルハージ風のEsterházy-Rostbraten(エスタルハージローストブラーテン)など、他のメニューに対しローストブラーテンだけは選択肢が豊富に用意されています。
ちなみにローストブラーテンはこんな感じの料理です。
もちろんウィーンの伝統料理でもあるウィーナーシュニッツェルやターフェルシュピッツなども注文できるので、何人かでシェアしてみるのも良いかもしれませんね。
またこのレストランでは定期的にディナーショーも催されており、オーストリアを代表するアンサンブルを聞きながら郷土料理を味わうというウィーンらしいディナーを楽しむこともできます。
多少値は張りますが(2025年現在で85ユーロ)、1泊2日など短期のウィーン旅行で時間に余裕がない方などにとっては手軽にウィーンの雰囲気を味わえるお店として知っておいて損はないはず。
季節によって雰囲気が変わる市庁舎
これまでご紹介してきたように、広場のイベントをはじめこの場所は季節によって見られるもの、味わえるものも異なります。
もちろんここに合わせてウィーン旅行の日程を決める必要はないと思いますが、ウィーンを訪れた際にはぜひ外観だけチラッと見て立ち去ってしまうのではなく、その内部や地下の名店、そして時期が合えば広場の催しなど存分に楽しんでみて下さい。
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