オーストリアで楽器演奏可能なアパートを借りる際に気をつける事
音楽留学の第一歩は学校選びや語学勉強ではなく、お部屋探しから始まると言っても過言ではありません。
この音楽教育が有名な国でさえ、楽器の練習が必須である音楽学生がお部屋を探すのはなかなかの大変さです。(オーストリアの音大についてはこちら)
ウィーンが音楽の都だからと言って、多くのアパートが防音室になっているわけではないのを探して初めて知ることになります。
学校の練習室や音出し部屋を借りられる所もあるのですが時間も限りがありますし、移動時間だってもったいない…家で練習するより効率は悪いですよね。
楽器可の物件を見つけたら
立地も良い、トイレも綺麗、音出しも出来る!近くのピザ屋が安くて美味い!
そんな物件を見つけても喜ぶのはまだ早いです。
というのも「音出し可」=「存分に楽器練習可」とは限らないからです。
ウィーンを例にすると、
- お昼12:00〜13:00、夜間22:00〜7:00までは音出し不可。
- 夜20:00以降は静かに。
- 日曜日・祝日は不可。
- 窓を開けたり等、外に音が漏れないようにする。
という「原則」があります。
また、物件によっては1日の連続音出し時間が決まっている場合もありますし、「楽器」の中に打楽器が想定されていない場合もあります。
ただあくまで原則で、全ての物件で上記が必ず決められているという訳ではないです。
お昼も日曜日でも音出し可能な所もあり得ますし、逆に1日最大2時間までという所もあるかもしれません。
というより実際の所、ほとんどの物件で音出しそのものが禁止されていることは少ないですが、「一般的な音出し時間以内であれば」OKというふわっとした規約になっていることが多いです。
そしてその一般的な音出し時間というのがだいたい1~2時間程度とされています。
ところが音大生にとっては(楽器にもよりますが)2時間というのはあまりに短い時間。
入試や卒試前でなくても1日8時間練習が日課という方も多いでしょう。
そのため細かい条件は必ず事前に聞いておいた方が良いです。
そして可能であればその条件を明記してある物件が良いです。
音楽を専門に学ぶ人とそれ以外の人との「練習」に対する常識は意外と離れているもので、仮に不動産会社の人や大家さんが「普通に問題無く音出し出来ますよ。」と言ったとしても、その「普通」は日中1時間程度の意味で言っている可能性だってあるわけです。
はっきりと「自分は〇時間程度毎日音出しする予定ですが問題ないですか?」と聞いた方が後々の事を考えると確実。
そこで一瞬でも回答が濁るのであればちょっと危険かもしれません。
また、聞けるのであれば上下左右、お隣さんについても聞いておきましょう。
正直周りが普段仕事に出かけているかどうかだけでもかなり違うもので、本来クレームになり得る長時間練習であっても、日中そもそも周りに人がいなければクレームも発生しません。
まぁお隣さんが引っ越したら意味ないんですが…。
物件を借りた後は
お隣さんにご挨拶に行っておきましょう。絶対。
手土産ですが、ちょっとしたチョコレートだったら食べられない人もそうそういないはずです。
たった一回の挨拶でも後々の苦情・揉め後を防げるかも知れないので、ドイツ語でのご挨拶なんて億劫かもしれませんが行っておいて損はありません。
また、建物の玄関などですれ違ったら挨拶するのは大事なマナーです。
苦情が起きたら
この時、「だって借りる時に音出し問題無いって言ったじゃないですか!」と言ったとしても、まず間違いなく不動産会社は、はいそうですね。 🙂 とは言いません。
大抵の場合、なるべく双方にとって穏便に済まそうという事で、今までは日中何時間でも問題無かったのが午後だけにしてくださいとか、2時間置きに休憩を挟んでくださいとかの条件を提示されることが多いです。
その物件がそもそも音出し不可でなければこちらに練習する権利はありますが、同様にお隣さんにも家で静かに過ごす権利がある事を忘れてはいけませんね。
何れにしても現状より悪い条件になる事がほとんどなので、 まず苦情を出さない事が何より大事。
また、一旦気になってしまうと止まらないのが人間で、苦情前より時間も音量も少なくしたにも関わらず「全然改善されない!」と苦情が出続ける事もあります。
こうなってしまうと最悪一切音が聞こえないようにしない限り解決しないので、「音出し可の物件に住んでいたと思ったら、いつのまにか音出し不可の物件に住んでいた。な…何を言っているのか分か(ry」となってしまいます。(防音室に作り変えるくらいの対策が出来れば話は別ですが、現実的ではないですね)
これは知人からの紹介で入った物件でもあり得る事で、紹介してくれた人は苦情を言われなかったのに自分は言われた、という場合やお隣さんもいつの間にか引っ越して別の人だった、という事も普通にあります。
今まで苦情が無かった=これからも苦情が無い、という訳ではないという事です。
最後に、もし苦情が出てしまった時にはすぐにまた手土産を持ってすいませんと挨拶に行き、「自分も迷惑を掛けたくないけど練習しなきゃいけないのでなんとかご理解いただけませんか?」と正直に話した方が間に大家さん等を通して話すより良い結果になったりするので、揉めた際は試してみて下さい。
それでも音出し時間の削減を求められた場合
この場合はお隣さんや不動産会社に反対しても良いことはないので、歯ぎしりしつつも他の代案・練習環境を用意する必要があります。
学校の練習室を借りる
これで練習時間を賄えられれば一番ですが、おそらくどこの学校であっても現実的には無理でしょう。
一人の学生が連続して利用できる時間が決まっていることが多いですし、ピアノであれば必ずしも調律の行き届いたピアノの練習室を使えるとも限りません。
スタジオや外部の練習室を借りる
ここはやはり音楽の都というべきか、ウィーン市内には大小様々なスタジオや練習室を有料で借りることが出来るので、困った時には一度訪れてみるのも手です。
ウィーン市内のピアノが利用できるスタジオ・練習室
Bechstein
住所
Musik Quartier 1040
Mühlgasse 30, A-1040 Wien
Musik Quartier 1060
Mariahilfer Straße 51, A-1060 Wien
Musik Quartier 1070
Kaiserstraße 10, A-1070 Wien
Musik Quartier 1220
Ilse-Buck-Straße 28, A-1220 Wien
Salon Karlsplatz 1010
Karlsplatz 5, A-1010 Wien
ウィーン市内に5つの施設を提供しており、小さな練習用の部屋からホールまで借りられ便利です。
場所によってはグランドピアノの練習室で1時間10ユーロから、アップライトの練習室で1時間5ユーロ程度から借りることが出来ます。
Stingl
https://www.stingl-klavier.at/index.php/service/studio-uebungsraeume
住所
Wiedner Hauptstraße 18, A-1040 Wien
1921年から続く老舗ピアノ店の練習室。
KAWAIのピアノが利用できるものの1時間18ユーロからといささか高めのため、本番前に借りてみるのが良いかもしれません。
Die Klaviermachermeister
https://www.dieklaviermachermeister.at/leistungen/uebungsraum/
Burggasse 27, A-1070 Wien
Steingraeber & SöhneやSamickのピアノが利用できる、ピアノメーカーの練習室。
グランドピアノで12ユーロから、アップライトは6ユーロから利用できます。
t-on
住所
Linke Wienzeile 40, A-1060 Wien
色々なジャンルに対応した練習室を借りられるスタジオ。
ピアノのある部屋は25~30ユーロと値段は安くは無いものの、平日午後3時までの直前予約なら10ユーロから、それ以外の時間帯の直前予約なら15ユーロから利用できます。
Imgraetzl
https://www.imgraetzl.at/raum/vermiete-raum-mit-flugel
住所
Theresianumgasse 11/S1, A-1040 Wien
ヤマハのグランドピアノが利用できる練習室。
Klangwerk
https://klangwerk.wien/klangraum
住所
Alxingergasse 4-8, A-1100 Wien
アップライトピアノが1時間12ユーロから利用できる音楽学校内の練習室。
30分単位で予約が可能なものの、最低料金が2時間分からなので注意。
VIMAC
https://www.vimac.at/proberaeume/
住所
Marokkanergasse 5/Stiege 5/EG Top 17, A-A-1030 Wien
音楽教室内の練習室。
合わせ用のアップライトピアノがある部屋よりレッスン用のグランドピアノ2台がある部屋の方が16ユーロと少し安いです。
練習室検索サイトもある
個人の方などが貸し出している練習室は以下のようなサイトでも検索できます。
MUSICTRAVELER
https://www.musictraveler.com/
PianoMe
練習室を借りる費用
可能な限りアパートで練習するとして、追加の練習時間確保のために仮に1時間10ユーロの練習室を1日3時間・月25日コンスタントに借りれば月750ユーロ、1日4時間なら月1,000ユーロです。
ピアノが不要な楽器の方であれば多少選択肢も広がるものの、年間で9,000ユーロから120,000ユーロと、日本円で考えればやはり相当な金額になることは避けられません。
ただし調律整備も不要、周囲にも気兼ねなく練習できると考えれば、環境を整えるための費用として一考の余地はあるかと思います。
費用も抑える最後の手段
これはピアノ科の方向けに限った話ですが、当時私自身学生だった際も隣人の方とのトラブルになり、それまで気兼ねなく弾けていた練習時間を抑える必要に迫られました。
その時は譜読み・暗譜用と割り切って格安の電子ピアノを購入し、普通のグランドでは演奏練習、電子ピアノで補助という風に使い分けることに。
その後、割り切りとは言え電子ピアノではさすがにキツイことが分かり、最終的にサイレントピアノに落ち着きました。
サイレントピアノであれば、下にゴムマットを引いておけば音の問題をほぼ解決できます。
打鍵音すら貫通する壁のお部屋なら別ですが、それでもピアノを置く位置を調整すれば多くの場合お隣さんに音が届くことはなくなるはずです。
サイレントピアノ(あるいは消音ユニット)についてはプロを目指す方であればタッチと響きの差など懸念される点はもちろんあると思います。
ただ、最近のものは特にその繊細な部分の改良が進んでいますし、なにより高価とは言え上述の練習室借りるよりははるかにお得で、かつ時間に縛られずにピアノに触れるメリットが非常に大きいです。
もちろん留学資金に余裕があってグランドピアノが存分に練習できるアパートを借りられるなら何よりでしょう。
しかしこの物価高の時代、現実には十分な練習時間が取れない状況に陥ってしまう方もいると思いますし、その時に練習できないからと言って座して祈っているわけにもいきません。
利便性と費用の両方を取るなら、通常ピアノでの練習に加えサイレントピアノも併用するのが個人的には一番かなと。
そもそも隣人トラブルにならないのがベストですが…。
知っておいて損はない!オーストリアのマナーについて
コレクター魂が熱くなる!ユーロの硬貨について
【Vienna City Card】本当に元取れる?ウィーンの割引特典付き交通機関チケット
ちゃんと届く?日本からオーストリアに郵便を送る方法
オーストリアですぐに使える3分ドイツ語
【チケットの選び方】ゼロから分かるシェーンブルン観光【地図あり】
オーストリアの郵便局と国内・日本へ荷物を送る方法
【ばらまき用】オーストリアのスーパーで買えるお土産用お菓子ブランド
種類がたくさん!ウィーン市内の交通手段・チケットや乗り方編
どうやって美味しく食べる?ドイツ・オーストリアのザワークラウト
初めてだって怖くない!オーストリアへの入国について
ここはどこ?オーストリアの住所・郵便番号・階の数え方について