【レストラン】オーストリアの「本場」和食と本当の日本食が全く違う理由
はじめてオーストリアに来た人でも数分歩けば簡単に見つけられる「Japanisch Restaurant(和食)」の文字。
「なんだ、日本食が食えないと思ったのにフツーにあるじゃん!」とウキウキ注文して、「思ってたのと違う…」としょんぼりお店を出てくるまでが洗礼の一連の流れです。
そんな経験を何度か積み訓練されたオーストリア在住の日本人の多くは、いつしかこの日本食レストランというもの自体を白い目で見るように…、なんてことは実際にこちらに住んでいる方であれば容易に想像が付くかと思います。
今回は、なんでここまでヘイトを集めやすいのかを深掘りしたいと思います。
※最初に断っておくとこれらを批判する記事ではありません。
オーストリア在住の日本人が滅多に和食レストランに行かない理由
料理自体が全く伝統的な日本食ではないから
Sushi・Ramen・Tempura…このあたりは特に人気のカテゴリで、だいたいどの日本食レストランに行っても「伝統的」なものを注文することが可能です。
しかし伝統的な日本のラーメンにマッシュルームが入っていることはありませんし、握り寿司にフライドガーリックとマヨネーズかけたりもしません。それぜったいアメリカ考案じゃん…
逆に自分が知らないだけでそういうのあるのかなって常識がグラつくことすらあります。
「あれ、カニカマスティックって握り寿司あるんだっけ…?」みたいな。
メニューが明らかに日中韓台ごちゃまぜ
炒め物カテゴリでは高頻度でお目にかかる「Ente(鴨)」の文字。
脳裏に「北京…?」とよぎるのは私だけではないはず。
プルコギやキムチ、ビビンバ、ワンタンなども常連メニューですね。
レモンチキンというものがあるのを逆に初めて知りました。
あとお通しの定番だからなのか、どこのお店もやたらと枝豆推してくる…。
日本の代表的な味イコール「TERIYAKI」になってる
美味しいですもんね、照り焼きソース。
でもそれはハンバーガーでの話であって、肉じゃがとかおでんとかそういうのもそういうのが日本の味なんですよね。
「鶏の照り焼き」とか「ぶりの照り焼き」って名前から翻訳した時に、調理方法ではなく味の名前として広まってしまったのかと。
刺身とはサーモンのこと、になってる
私も日本でお寿司屋さん(もちろん回る方)に行くときは必ずサーモン頼みます。生も炙りも美味しいですよね。
でも回らないお寿司屋さんに入って、メニューにサーモン(とせいぜいマグロ)しかないと「せめてタタキだけでも…」って思ってしまうことも。
ネーミングが気になる
「Samurai Platte」とか。「Natsu」「Sakura」「Shibuya」とかも頻出単語です。
こちらでは当然のようになんちゃら「Bento Box」という店内お召し上がりメニューが存在している矛盾に気付いてしまうのも我々日本人だけです。
「Teishoku」とか「Gozen」だと語呂が悪いのかな…?
明らかに割高
2024年現在だと、安い店でも寿司一貫で大体3ユーロ強、一品料理で15ユーロ前後といったところですかね。
日本食の場合高級レストランも多く、一皿40ユーロとかもザラにあります。
日本人として気になるのは決して味の良し悪しではない
上記のような違いをまとめると、一つ共通して気付くことがあります。
それは「“日本”をちゃんと知ってる店じゃない」ということ。
私達はそのことが気になってしまうのだと思います。
つまり、
- 日本食が食べられると思って入ったのに日本人の自分が知らない味や料理が定番として提供されていている。
- 元々高いものだと錯覚させてくるような値段設定。
- しかもこっちの人たちも多分そのことを知らない。
といった具合です。
ただ、店主やオーナーが日本人かどうかなんてことは気にしていないはずです。
正確に言えば、本来容易に知れるであろう普通の日本食ではないものを、「本場の」といったニュアンスで出されていることが気になるのだと思います。
それでも試してみないのはもったいない
ここまで、おそらく多くの方が日本人として気になるであろう点を挙げてきました。
しかし私個人としては、それでも…物は試しと味わってみることをおすすめしたいです。私達が知る日本食でなくてもです。
もちろん私達が知る日本食ならなお良いですが。
どういうことかと言うと、上述に上げたような違いが生まれたのには以下の様な事情も関係している、ということを知っておくと見方も変わるためです。
日本食イコール「高級」神話が健在
今ではご存じの通り「お高い国」ではなくなってしまった日本ですが、割と最近まではむしろ「物価が高い国」として知られており、日本食も当然ながら高級志向の食文化として知られていました。
ラーメンやおにぎり、牛丼といった庶民の食べ物もオーストリアで老若男女問わず知られるようになってきたのは、SNSの普及があってもまだまだ最近と言えるくらいです。
そのイメージ自体は(今はまだ…)残っており、「ディナーに日本食?豪勢だね!」みたいなところがあります。
そのため、単純にレストランで単価を上げるなら日本食を出すのが手っ取り早いというわけですね。
寿司ネタの仕入れが困難
内陸国でもあるオーストリアでは、特に海産物の食材は輸入でしか調達することができません。
そのため日本ではなじみのあるウニや貝、アナゴ、サバなど多くの海の食材は仕入れること自体が難しく、ヨーロッパ全体での需要が高いサーモンやマグロ、イカなど限定した食材で何とかしなければならず、しかも安く提供することも困難な事情があります。
しかし日本食の顔でもある寿司を出す以上ある程度メニューの幅も必要なわけで、アボカドや卵、きゅうりなどでやりくりしているわけですね。
もちろん中には本格的なお寿司を握ってくれるお店も無いわけではなく、そういった所では日本でもおなじみのネタがあったりするのですが、それでも割高になってしまうのは致し方ないこと。
なので価格帯については「海外で日本食を食べられる」ということへの感謝を含めた価格だと、私は思っています。
欧州人からすれば日中韓台の食文化の差は見えない
こっちの人からすると、正直ラーメンも麻婆豆腐もビビンバもひっくるめて「アジア料理」です。
当然ながら日本の餃子と中国の餃子の違いなんて知る由もないですし、お店が日本食だというのなら日本食なのだろう、という先入観もあります。
であれば多少ブレててもお店のメニューに幅を広げられるならキムチや小籠包だって入れたくなるというもの。
ここで一つ紹介したいのが、ラーメンセットに付いてくる付け合わせの餃子。
お店によっては、なぜか日本の薄皮餃子じゃなくて本場中国の餃子が出てきます。
皮から手作りなのかモッチモチで肉汁もトロリ。まぁ普通に考えれば中国の方が作っているからなんでしょうが、こちらとしては嬉しい誤算。
餃子も中華専門店に行けば結構なお値段することもあって、「そういう思いがけない味が楽しめるのはむしろメリットでは…?」と一度割り切ってしまえば、日本食かどうかというのはぶっちゃけそこまで気にならなくなります。
日本人の美味しいと欧州人の美味しいは同じではない
ご飯に納豆こそ至高と言う人もいればご飯にキムチこそ究極と言う人もいるでしょう。
マヨネーズに手を伸ばす人もいるかもしれません。
一方オーストリアはご飯をプリンにするという手段を取りました。
それくらい違うのです…。
それに比べれば巻き寿司のご飯を揚げる程度大したことは無いですし、カシューナッツ照り焼き豆腐丼とかいう「伝統的」な日本のDONBURIがでてきたって驚きもしません。
(誤解の無い様に言っておくと私はどちらも普通に美味しく食べることができました)
オーストリアのお店なのですから、例え日本食であっても日本人の好みではなくオーストリア人が最も美味しいと思える味に調節するのは当然のこと。
私はそういうもんだと受け止めています。
オーストリアの日本食が食べられるのはオーストリアだけ
私がこっちでも普通に和食レストランの暖簾をくぐる理由で、一番はこれです。
オーストリアに住んでいる方でも、日本に帰って友達と飲むこともあるかと思います。
そんな時「ウィーンで和食バーに寄ったらさ、トリュフマヨにディップする海老天が入ったキツネロールってのがでてきたたんだよね…」みたいな土産話がぶっ込めたら良くないですか?(実在する料理です)
実際の所、ラーメンに唐揚げ入ってたりカレーうどんにトンカツ乗ってたりは日常茶飯事なんですが、明確に「食べられないよ…」と思ったことは一度もありませんし、知らない味付けこそあれど日本人的にもウマいお店はたくさんあります。
ウマい、マズイ、変だった、意外と美味しかった等々、実際に体験してみないことには語れません。
それこそ学生の方であれば卒業後に帰国することもあるわけで、永遠にオーストリアに住むとも限りません。
こういうのは行ける時に、体験できる時に経験しておくと、将来良い思い出になるというもの。
食わず嫌いで「やっぱりあの時行ってみればおけば良かった…」なんて悔いが残らないよう、気になったお店はドンドン足を運んでみることをおすすめします。(お金は掛かりますが…)
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