【ウィーン旅行】本物のウィーナーシュニッツェルの見分け方・歴史と定番のレストラン・カフェ一覧
もしあなたに外国人のお友達がいて「日本の本物のトンカツを食べた!」と言ってメンチカツの写真を見せてきたら「ちょっと待てぃ!!」とツッコんでしまうのは自然の摂理かと思いますし、「日本のSUSHIは最高だ!」と言ってカリフォルニアロールの写真が出てきたら今すぐお寿司屋さんに連れて行ってあげたくなるのは仕方のないことだと思います。
メンチカツもカリフォルニアロールも美味しいのは分かりますがそれとこれとは話が違うと。
それと同じように、実はオーストリアにも似たような混乱を招く有名な料理があるのをご存じでしょうか?
そう、シュニッツェルです。
このオーストリアの伝統料理にもいくつか種類があり、予備知識ゼロでウィーン旅行に来てシュニッツェルを食べたとしても、上述の外国人のお友達と同じような状態になってしまっている可能性があるということです。
あなたが食べたのは本当にウィーナーシュニッツェル?
結論から言うと、モノホンを食べるなら「○○ Schnitzel」や「Schnitzel Wiener Art」ではなく「Wiener Schnitzel」とメニューに書かれたものを注文すること、そして衣が波打つような形をしており肉との間に空気の層があること、これを食べてこそ本当のウィーナーシュニッツェルを味わったと言えるでしょう。…とウィーン人でも無ければ海原雄山でもない私が言っても説得力は皆無なんですが、それでもウィーン人の大多数の方は同じ意見だと確信しています。
なので今回はこれから旅行でウィーンを訪れる方が迷わずに済むように、このシュニッツェルなる料理の歴史や作り方からウィーナーシュニッツェルとの違いや本物の見分け方、そして本物のウィーナーシュニッツェルが食べられるお店のご紹介をしていきます。
そもそもシュニッツェルってなに?
スライスした肉に火を通した料理で、一般的に広く知られているのはスライス肉にパン粉をまぶして揚げたもの。
ドイツ語では「切る」は「schnitten(シュニッテン)」と言いますが、切られたものを指す「Schnitzelein(シュニッツェライン)」から名付けられたものと言われています。
※「Schnitzelein」が口語では省略され「Schnitzel」になるため。19世紀までは「Schnitz」「Schnitzchen」という表記もありました。
ウィーナーシュニッツェルと普通のシュニッツェルの違い
ウィーナーシュニッツェル(あるいはウィンナーシュニッツェル)は、小麦粉・溶き卵・パン粉をまぶし、油で揚げた子牛のシュニッツェルのことを指します。
トッピングはお店によっても様々ですが、くし形または半分に切ったレモンは伝統的に受け継がれており必須と言えるでしょう。
あとはお酢のポテトサラダやクランベリーソースなども昔から付け合わせとして有名ですが、ウィーナーシュニッツェルの定義としてはそこまで決められてはいないようです。
特に子牛肉というのが非常に重要で、ここオーストリアや隣国ドイツでは鶏肉の「Putenschnitzel(プーテンシュニッツェル)」、豚肉の「Schweineschnitzel(シュヴァイネシュニッツェル)」、肉ではなくハムとチーズを挟んだ「Cordon bleu(コルドンブルー)」など肉の種類によって呼び名が異なる他、油で揚げない「Putenschnitzel natur(プーテンシュニッツェル ナトゥア)」やキノコのクリームソースがかかった「Rahmschnitzel(ラームシュニッツェル)」など、調理法や付け合わせ等によって異なる呼び名のシュニッツェルも多数存在します。
ちなみに「Jägerschnitzel(イェーガーシュニッツェル)」は東西ドイツで肉を使うかソーセージを使うかすら異なる地域性の高いシュニッツェルの一つ。
日本で例えるならひと口にお好み焼きと言っても「関西風」「広島風」「関東風」という明確な違いがあるように、ウィーナーシュニッツェルと言われれば一般的にオーストリアの人々は同じものを想像しますし、オーストリアの食品ガイドラインでは「ウィーナーシュニッツェル」と表示された製品は子牛肉で作られていなければならないと規定すらされています。
また誤解がないように補足しておくと、子牛肉(Kalb)を使ったシュニッツェルは「Kalbschnitzel(カルプシュニッツェル)」と呼びますが、ウィーナーシュニッツェル=カルプシュニッツェルではありません。
あくまで人々のイメージを逸脱しないよう調理された子牛肉のシュニッツェルの一種が「ウィーナーシュニッツェル」であり、豚・鶏などのシュニッツェルと肉の種類から区別するために、子牛肉の「カルプシュニッツェル」という表現が使われます。
ウィーナーシュニッツェルとウィーン風シュニッツェル
呼び名に関して特にウィーン旅行者が200%勘違いしやすいのがこの2つ。
ウィーナーシュニッツェル(Wiener Schnitzel)はこれまでご紹介してきた通り子牛肉のシュニッツェルの一つであるのに対し、ウィーン風シュニッツェル(Schnitzel Wiener Art)は豚肉のシュニッツェルを指します。
昨今はレストランでのアレルギー表示なども厳格化されており、体質上あるいは宗教上の関係で豚肉が食べられない方への誤解を避けるため、後者は別名「豚肉のウィーナーシュニッツェル(Wiener Schnitzel vom Schwein)」とも表記されてきているのですが、そうでなくてもウィーン市内の観光地でレストランに入った際には注意が必要なのが分かって頂けるかと思います。
シュニッツェルの起源と歴史
シュニッツェルと呼ばれるようになったのはオーストリアからですが、発祥かどうかは実は定かではありません。(ちなみにウィーナーシュニッツェルという用語が使われ出したのは19世紀以降)
というのもこの「肉にパン粉をまぶして揚げる」という料理手法ははるか昔から世界各地で誰もが思い付いたであろうもので、その始まりがオーストリアどころかヨーロッパ内とさえ断定できる文献がないためです。
パン粉の起源、つまり古くて固くなったパンをすりおろして使い始めたのもキリスト教以前の時代にまで遡るため、特定するのはかなり困難なのだと思われます。
似た料理という意味では日本にもトンカツがありますし。
またウィーナーシュニッツェルの起源としては、1857年にヨーゼフ・ラデツキー元帥がイタリアからこのレシピを持ち帰った説が巷ではちょくちょく見かけます。
彼は1848年から1849年にかけてオーストリア軍総司令官としてイタリア革命を鎮圧した人物で、この説では滞在中にコストレッタ・ミラネーゼ(Cotoletta alla milanese – 14世紀から16世紀に始まったとされるミラノ風カツレツ)を知ったとされていました。
彼はその料理に非常に感激し、軍事報告書の余白に皇帝に報告。帰国後、ラデツキーは宮廷に召喚され、コストレッタ・ミラネーゼのレシピを皇帝の料理長に伝えた所、このレシピはすぐにウィーンの宮廷で試され、そこからすぐに帝国全体に広まりました…という内容です。
しかしこの説は1967年に民俗学者Günter Wiegelmannや2001年に歴史家Richard Zahnhausenが否定し、そして2007年に言語学者Heinz Dieter Pohlが明確にこの説を創作されたものであることを証明したため、分かっていることはラデツキー元帥の時代よりずっと前から食べ物にパン粉をつけて油に浮かべて揚げていたということだけです。
ただ、シュニッツェル以前にもウィーン料理にはパン粉をつけて油で揚げた料理がいくつかあったとされており、特に「Backhendl(バックヘンドル)」と呼ばれるウィーン風フライドチキンは1719年に料理本に初めて紹介されています。
1860年代には同じ方法で作られたシュニッツェルがウィーナーフライドチキンをもじって、やっとウィーナーシュニッツェルと呼ばれるようになりました。
ちなみにウィーナーシュニッツェルはもともとお祝いの料理としてのみ食べられており、1900年にウィーナーシュニッツェルがレストランのメニューに登場し、一気に一般的なパブ料理になったようです。(当時も子牛肉の代わりに安価な豚肉が使われることが多かったそう)
ウィーナーシュニッツェルを提供しているレストランの見つけ方
ドイツ語でウィーンの郷土料理を指す「Wiener küche」、あるいはオーストリアの郷土料理を指す「Österreichische Küche」などでググると山ほど見つかります。
本物のウィーナーシュニッツェルの見分け方
ウィーン市内の多くのレストランでは子牛肉の「Wiener Schnitzel」をメニューに載せていますが、やはりそこには良し悪しというものが存在します。
美味しいかどうかというのは個人の味の好みにも左右される曖昧なものですが、良いウィーナーシュニッツェルかどうかは舌ではなく目で見て判断が可能なのは知っておいて損はありません。
見分け方その1
ウィーナーシュニッツェルの条件として子牛肉でなければならないのは前述のとおりですが、子牛肉であればどこの部位でも美味しくなるわけではなく、一般的には脂肪や腱のない赤身の部分、背中・腰肉のロース肉や脚の部分が良いとされています。
そしてシュニッツェル独特の大きさにするために、バタフライカットと呼ばれる切り方をし、叩いてさらに薄く伸ばしていく必要があるわけです。
なので、我々日本人が知る「分厚い肉は正義」という理屈はここではあてはまらず、脂肪のない肉が均一に薄く伸ばされている方がより美しくより本物というわけです。
なんちゃってウィーナーシュニッツェルを出すお店のお肉は薄さにかなり妥協があり、薄めのトンカツと言っても差し支えない分厚さが出てくることがあります。
もちろんお店によってはサイズは異なるため、バタフライカットをせずに小さめのもので複数枚一皿に盛られることもありますが、薄さについてはどのお店でも共通認識です。
見分け方その2
これが最も重要で、良いウィーナーシュニッツェルはパン粉の付け方が違います。
悪いウィーナーシュニッツェルの典型は、ナイフで切った時に肉と衣がぴったりとくっついていること。
良いウィーナーシュニッツェルは肉と衣の間に空気の層が必ず出来ており、衣全体がまるで波打っているかのように凹凸があります。
この点も日本とは真逆ですよね。
とんかつで切った際にスカスカだったら怒られそうなものですが…。
この空気の層ができていることをウィーン人は「soufflieren(スフリアレン)」と呼ぶのは豆知識として覚えておくと、ウンチク自慢できること間違いなし。
どちらの動画でも触れている通り、この空気の層がウィーナーシュニッツェル独特の軽さと食感を生み出す秘訣なんです。
これはパン粉を付ける際に押し付けるのではなくさっと被せて肉の重みで自然につく程度にしていることと、揚げる際に鍋を振って肉全体に均一に脂がかかるようにしていることの証でもあり、いわゆるウィーナーシュニッツェルの技適マークといっても過言ではありません。
あとお店によって多少異なりますが、揚げ油として170度の澄ましバター(Butterschmalz – 溶かしバターの上澄みのみ取り分けたもの)を使うことが黄金色のカリカリに揚がる理由の一つにもなっているようです。
ウィーナーシュニッツェルが有名なレストラン・カフェ
これは個人の好みもありますし、競争の激しいウィーンではお店が無くなったりといったことも日常茶飯事なのでなかなか難しいところですが、
- 地元民にも定評がある
- ある程度長く続いており、多分無くならない(人気店のため価格帯は高め)
ことを基準にピックアップしてみましたので、ウィーン観光の際にはチェックしてみて下さい。
Figlmüller
住所
Bäckerstraße 6, A-1010 Wien
Wollzeile 5, A-1010 Wien
ウィーナーシュニッツェルと言えばココと言われるほど定番のお店。
連日観光客で賑わい余りにも混んでいるため、すぐ近くに2店舗構えているほどです。
Restaurant Meissl & Schadn Wien
住所
Schubertring 10-12, A-1010 Wien
こちらも超有名店。
Zum Schwarzen Kameel
住所
Bognergasse 5, A-1010 Wien
Schnitzel König Wien
https://schnitzel-koenig-wien.eatbu.com/
住所
Landstraßer Hauptstraße 103, A-1030 Wien
Schnitzel Wirt
https://www.schnitzelwirt.co.at/
住所
Neubaugasse 52, A-1070 Wien
ウィーナーシュニッツェルなら街中でもかなり良心的な価格。
Schweizerhaus
住所
Prater 116, 1020 Wien, オーストリア
大観覧車でも有名なプラーター公園内のレストラン。ただ、ここに来たならシュニッツェルよりもシュテルツェ(Stelze – 豚の足)が食べたいところ。
Lugeck
住所
Lugeck 4, A-1010 Wien
Zum Weissen Rauchfangkehrer
https://www.weisser-rauchfangkehrer.at/
住所
Weihburggasse 4, 1010 Wien
Restaurant Vienne
https://www.restaurant-vienne.at/
住所
Fleischmarkt 20, A-1010 Wien
Restaurant Ofenloch
https://www.restaurant-ofenloch.at/
住所
Kurrentgasse 8, 1010 Wien
Café Korb
住所
Brandstätte 7/9, A-1010 Wien
Hotel Sacher Wien
住所
Philharmoniker Strasse 4, A-1010 Wien
ホテルザッハーには複数のレストランやカフェがありますが、「Grüne Bar」ではウィーナーシュニッツェルは提供されていないので注意。
Café Landtmann
住所
Universitätsring 4, A-1010 Wien
Café Central
住所
Ecke Herrengasse / Strauchgasse, A-1010 Wien
Gerstner K. u. K. Hofzuckerbäcker
住所
Kärntner Str. 51, 1010 Wien, オーストリア
Café Schwarzenberg
https://www.cafe-schwarzenberg.at/
住所
Kärntner Ring 17, A-1010 Wien
Café Sperl
住所
Gumpendorferstrasse 11, A-1060 Wien
ウィーナーシュニッツェルが食べられるお店は山ほどある
上記でご紹介したのはあくまでほんの一部にしかすぎません。
「東京で美味しい醤油ラーメンを食べられるのはどこ?」と聞かれても困ってしまうように、ウィーナーシュニッツェルが食べられるおすすめのお店というのは、地元民でもそうそう解を出せるものではありません。
そのためこれまでご紹介したようなポイントを参考に、ウィーンを訪れた際にはウィーナーシュニッツェルの食べ比べをしてみるのも良いかもしれませんね。
最期に、個人的には豚肉の方が安くて好きです…。
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