- 単語は知っているのに話すことが出来ない?
- 言いたいことが喉から出かかっているのに話すことが出来ない?
- まるでビビったZ戦士の様に「あ……あ…っ!!」と言葉失ってしまう?
分かります。
初めての海外、初めての外人との会話、初めての海外デビューでのあるあるです。
単語と文法を十分に学んでいれば話す事なんてそう難しい事ではないと想像できますよね。
あとは自分が言いたい日本語をそのまま脳内翻訳すればよいわけですから。
でも実際には初めて現地の人と話そうとして、「何も言葉が出てこない自分に驚いたんだよね」という経験を持つ人の方が多いんじゃないかと思うくらいあるあるです。
今回ご紹介したいのは、この「自分が言いたい日本語」というポイント。
なお、私自身がドイツ語と英語しか触れたことが無いためタイトルを【ドイツ語・英語】としていますが、同じことが言える外国語は他にもたくさんあると思います。
正しい日本語を考えるクセを付ける
外国語を話そうと口を開きかけた際、普通こんな感じの順番で考え始めます。
① 言いたいことの内容を考える
② ①の日本語文を考える
③ ②の翻訳文を考える
④ ③を口に出す
時間的には一瞬でも、皆さんの頭の中ではこんな感じの流れで考えた言葉を発していると思います。
①については赤ん坊の頃からやっていることですし、③は単語や文法を覚えて語彙力を高めれば解決する類のものです。
ですが、②の「日本語文を考える」という部分がやっかい。
日本語なんだから普段やってるじゃんと思う所ですが、「翻訳元としての日本語」を考えることは普段のそれとは少々違ってくるんです。
ドイツ語・英語でなかなか言葉が出てこないという場合、ここでつまづいているのに、そのことに気が付かず単語をさらに覚えこんだり、やたらと難しい文法を使おうとしたりと遠回りな話す練習をしてはいないでしょうか?
例えば、こんな場合です。
まる子「明日の夕飯ってなーに?」
お母さん「明日はチキンカレーよ」
この母の回答を翻訳する際に、初学者がやってしまいがちな翻訳がこちら。
ドイツ語:Morgen ist Hühnercurry.
英語:Tomorrow is chicken curry.
多少語学をかじっていれば即「そうはならんやろ」と突っ込むくらいシンプルな例にしていますが、初めて外国語を学ぶ場合ついついやってしまいがちな直訳ぶち込み法です。
これは少しアウトプットに脳を慣らせば自然と無意識の内にやらなくなることではあります。が、この違和感に気付くのが時間がかかってしまうと、それだけもどかしい思いをすることになります。
上記の例では当然ながら「明日イコールチキンカレー」ではないですよね。
もしこの母が哲学者かなにかで「明日とは、具材という名の乗り越えるべき障害を濁流の如く煮込んだカレーのことよっ!」と子供を諭すのであればこの翻訳でも合っているのかもしれませんが、そうではないはず。
この場合、母が言いたいのは
「明日(の夕飯)はチキンカレーよ」
です。
そのまま答えるならこんな感じでしょうか?
ドイツ語:Das Menü für dem Abendessen morgen ist Hühnercurry.
英語:The menu for dinner tomorrow is chicken curry.
話し言葉としては大分硬いですね。「明日夕飯の献立はチキンカレーであるぞ!」ってくらい硬いです。
普通に日常会話なら「Hühnercurry.」「Chicken curry.」だけで十分。
このように、我々日本人が話している日本語は様々な短縮や省略・変形が行われており、翻訳する際にはそのまま使えないことが多々あります。
多くの場合、5W1H、特に「誰が」をはっきりさせることで正しく翻訳することが可能です。
母国語ではない言葉を口に出そうと思った時に、瞬間的にこの本来の、つまり「正確な意味の」日本語文を翻訳元として脳内で準備できるかが初学者脱出のポイントの1つであり、短い期間で会話できるようになるポイントの1つでもあります。
座学やSNS・メールでのやり取りと違い対面でのやり取りにはその瞬発力自体も重要ですが、それは何度も会話の経験を積むことで段々慣れてきます。
他にも考えてみましょう。
「明日やるってよ」
「明日それが行われるそうです」
「これパン粉付けてから揚げる感じ?」
「(私は)この肉にこのパン粉をまぶしてから油で揚げていけば良いですか?(揚げていくべきですか?)」
「突き当りの受付で申請書をもらったら、必要な部分を書いて提出してください」
「(あなたは)突き当りの受付に行き(そこで)申請書をもらったら、必要な部分を(その申請書に)書いて(私に)提出してください」
「あきらめたらそこで試合終了だよ」
「(あなたがプレイすることをあきらめたら)その時点で試合は終了するでしょう」
「真実はいつもひとつ」
「いつでも真実はひとつのみです」
ある程度の単語・文法の知識があれば、下段の文章なら翻訳しやすいですよね?
こんな感じでちょっとだけ正確に文章を考えていくクセをつけると、言いたいことがさらりと言えるようになるわけです。
言い回しを変えるクセを付ける
会話での瞬発力を付けるには、もう一つ知っておきたいことがあります。
それは言い回し、つまり語順や補足、能動・受動を変えてみることです。
最初の例から考えてみましょう。
「明日の夕飯はチキンカレーです」
「チキンカレーが明日の夕飯です」
「明日の夕飯に私達が食べるのはチキンカレーです」
「明日の夕飯はチキンカレーを食べましょう」
「明日夕飯の食卓にはチキンカレーが並ぶでしょう」
こんな感じで同じ意味の文章でも複数の言い回しが出来ます。
特に、先ほどご説明した「誰が」がはっきりとしない場合というのは非常に多く、言葉に詰まって「私が」とか「私達が」とかで適当に補ってしまうとガッツリ意味が変わってしまうこともしばしばです。
場合によっては強調されるニュアンスが変わる事もあるため注意は必要ですが、選択肢は多い方が躓かずに話し出せる引き出しも増えます。
(頭で浮かんでいる)こんな感じの事を言いたいんだけど、日本語と同じ語順で言い始めるとその先なんて繋げていいか分かんない…!
というような脳内つまづきを経験することも海外生活ではしばしば。
もしくはある程度会話に慣れてくると、とりあえず返事をするためにドイツ語なら「Das ist…エー…」、英語なら「It’s…アー…」と話し始めてから言いたいことを考えるような場面もあります。
そんな時この言い方を変えるクセをつけておくと、スムーズにその先を繋げて言えるわけですね。
ちなみにドイツ語にも英語の「It’s ~」「There is ~」構文に相当するものはあり、こういう時に役立ちます。
難しいことは分割して言う
「あそこにあるテーブルとイスは実はさっきペンキを塗り替えたばかりなんだけど、そのまま持つと手が汚れるし跡が付いちゃうから、この子達と一緒に脚の部分を持つようにしてそーっと隣の部屋まで運んでくれるかな…?」
これをドイツ語や英語でなんて言うでしょうか?…分かんないですよね?私も分かりません。とっさに同じことを言える自信は皆無です。
でも同じ内容を伝えることならできます。
「あそこにテーブルとイスがあるじゃろ?」
「あれらはさっきペンキを塗った(塗られた)ばかりなんじゃ。」
「もしそのまま持つと(君の)手が汚れるじゃろうし、(触った部分に)跡も付くじゃろう。」
「じゃから脚の部分を持った方がよさそうじゃ。」
「じゃあ隣の部屋までそーっと運ぶのを手伝ってもらって良いかな…?そう、この子達と一緒にね。」
という感じならどうでしょうか?
一文一文はシンプルなので、あまりアウトプットに慣れていなくても伝えられるはずです。
このように複数の要素をいっぺんにかっこよく伝えるのではなく、なるべく小刻みにすると言葉に詰まることも少なくなります。
また、長くなくても日本語では一般的な「○○の××の△△を□□に●●した」といった表現もくせもの。
ドイツ語の2格desやら英語のofやらを鎖の様に繋げまくってしまいがちです。
そういった際にも「テーブルとイスがある」「ペンキを塗ってある」「脚を持つべき」という風に分けて表現するクセをつけるとだいぶ楽になります。
小難しい言い回しは勉強のテキストの中だけで十分です。